内容説明
未邦訳のライプニッツ文書を渉猟し初めて明かされる哲学者ライプニッツの生身の姿。そして逆照射されるスピノザ革命の真価。廷臣ライプニッツは何に仕え、破門の異端者スピノザは何から自由であったのか。生きた哲学史の新しい風。
目次
一六七六年十一月のハーグ
ベントー
ゴットフリート
精神の生活
神の弁護人
人民の英雄
ライプニッツの多面性
友人の友人
恋するライプニッツ
事物の全体についての秘密の哲学
接触
生けるスピノザ
スピノザ主義への解毒剤
出没する亡霊
抑圧されたものの回帰
ライプニッツの終わり
余波
著者等紹介
スチュアート,マシュー[スチュアート,マシュー][Stewart,Matthew]
1985年プリンストン大学卒業(政治哲学)、1988年オックスフォード大学でPhD(哲学)取得
桜井直文[サクライナオフミ]
現在明治大学教授。1982年一橋大学大学院社会学研究科博士課程中退。研究領域、哲学史・17世紀ヨーロッパ思想の諸問題
朝倉友海[アサクラトモミ]
現在東京大学助教。2009年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程(哲学)修了。研究領域、形而上学史・生命論・東アジア比較哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兎乃
31
朝のスピノザ読み10分、そのストレッチ。著者はライプニッツの未邦訳文書を渉猟、1676年へ タイムスクープハンターのように降り立つ。当時のユダヤ人コミュニティや宮廷の有様、ヨーロッパ的秩序、その時代背景を案内されつつ、“究極のインサイダー、ライプニッツ”と、“破門を経て近代を切り拓く哲学を鍛え上げ、静謐なる孤心を身につけた自足の賢者スピノザ”、二人の姿が映画仕立てのように生き生きと描かれている。(ライプニッツの顔の相がホント嫌なんだけど)楽しい哲学史。こういう本からエチカに接近するのは 良い手段かも。2015/09/04
ステビア
26
偶像破壊者スピノザと、たった数日だけ相見えた彼に生涯をかけて反駁しようとし続けたライプニッツ。『テロルの決算』『ロベスピエールとドリヴィエ』、あるいは『スクライド』(!)の哲学版といえるだろう。いやー面白かった!2022/08/30
苺畑序音
9
「究極のインサイダー」ライプニッツ と「不気味に自足した賢者」スピノザ。二人の哲学の対決が物語として非常に面白い。読後感はすっきり です。2016/09/26
Bartleby
9
二人の哲学者スピノザとライプニッツの人生と思想が交差する様が描かれている。とにかくスリリング本だった。ライプニッツといえば万能型の天才というイメージがあるけど、この本での彼に対する著者の視線は辛辣で、その描かれ方は(風車の件や「17世紀のルイ・アームストロング」など)時にユーモラスでさえある。でもそんな風にライプニッツの人間臭い面を著者が描けば描くほど、彼のことが魅力的に感じられもした。反対にスピノザはその生涯や思想について説明されるほど、かえってミステリアスな印象が増してくる気がするのも不思議だった。2014/03/19
白義
9
迫り来る近代を予告し、その原理を擁護した近代哲学のチャンピオン、神憑り的な天才スピノザに対し、彼が体現する近代に対し全身全霊を持って抵抗した万能の秀才だが虚栄心のような俗人らしさも漂うライプニッツ。この二人の伝記と思想解説を軸に近代哲学とそれへの反抗の歴史の始まりを描いた傑作評伝。本書の主人公はライプニッツでありスピノザはライバルだが、それは例えばライプニッツがジョーでありスピノザが力石であるという意味でそうだ。常に主人公の先を走り、主人公がそこに回帰する最強の宿敵2012/08/22