内容説明
ひと皿に料理人のすべてがあらわれるように、日本の食文化の成熟を担ったベテランシェフたちのひと言には、「ほんものの味」を生み出してきた、その過程がぎゅっと詰まっている。料理の世界で生きてきた25人のインタビュー集。
目次
「現地修業で失敗しても、何回でもやり直せばいい」谷昇・フランス料理
「現地になじまなければ、文化の長所はわからない」鮎田淳治・イタリア料理
「海外で学んでいる間、日本に手紙を送ることも重要だった」佐竹弘・イタリア料理
「ほんとうのイタリア料理を、日本に定着させたくて」吉川敏明・イタリア料理
「一箇所からの定点観測でわかることもある」野崎洋光・日本料理
「病気が治って、働けるだけでもありがたかった」塚越寛・寒天製造業/会長職
「フランスで知ったのは、土地と料理のつながりでした」音羽和紀・フランス料理
「フランスでは、心から納得できる基準を見つけられた」小峰敏宏・フランス料理
「疲労が溜まって、西麻布から軽井沢に移住を決めました」田村良雄・フランス料理
「海外で感じたのは、信頼ってありがたいんだということ」田代和久・フランス料理
著者等紹介
木村俊介[キムラシュンスケ]
インタビュアー。1977年、東京都生まれ(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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penguin-blue
41
日本を代表するシェフ達に料理を志すきっかけから、修行時代、現在と料理への思いを聞いたインタビュー集。多くは1940~50年代生れのフレンチ、イタリアン畑の方達でまだ海外修行が珍しい中での現地での苦労や、西洋料理が今ほど浸透していない中で店の土台を固めていった努力が語られる。印象的だったのが、いかに地道な努力の積み重ねや、厨房で多くの時間を過ごすのが大切か、基本動作や基礎知識が大事か、という話が多かったこと。「天才のひらめき」も当然あるのだろうけど、衰えぬ料理への愛情と、重ねてきた時間の重みを感じた。2019/08/30
らひたかおる
3
木村さんの名インタビューっぷりがすごい。ここまで気配を消し、かつ濃密に相手の話を引き出すことができる手腕…天才やと思います。ひとつひとつの話はそこまで長くないけれど、読み始めてすぐにぐっとひきこまれる。そして、料理人(今の世界一と言われる日本の食文化を切り開いた人々)の働き方って半端ないなあと思った。体力的にも精神的にも極限のところで切り開いていったんだ。田村良雄さんの、若い人はどう働くべきか?みたいな話のところが、今の自分にはすごく効くなと思った。背筋が伸びるような話がたくさんです。2012/06/17
Humbaba
2
留学をしたとしても、それだけで何かを得られるわけではない。自分から何かを吸収しようとせず、ただ漫然と受け身でいつづけた場合には、戻ってきてから自分が望んでいたものを身につけられていないことを痛感することになるだろう。知り合いがおらず、だれも自分を注意してくれない環境だからこそ、自省する心が求められる。2014/09/28
nizimasu
2
雑誌「専門料理」の連載をまとめた料理人や関係者のインタビュー集。しかし難しい内容ではなく、むしろ料理人としての心持ちや矜持といったものを本人のことばでつづっているが、著者の木村さんという方、後ろの略的でわかったが、インタビュアーという黒子の中でもかなりクオリティの高い作品を数々手がけていらっしゃる。その点でも満を持しての自身の著者名での作品ということだけあって、非常に濃厚。ライターの仕事の中でもかなり本人の文章に対する心遣いが行き届いていて、一流料理人同様見事なお手前でありました2012/08/07
オーロラ
1
読み応えがある1冊。インタヴュアーの優秀さを感じずにはいられない。講演を目の前で聴講しているように読める。 仕事への愛情と熱意、伴う労働の過酷さが語られている。仕事についての姿勢など、キャリア教育のために早くからこういった本を10代に読ませてあげたい。2012/05/13