内容説明
椅子の部屋、地下通路、砂の街、十五番目の水の部屋…閉ざされた奇妙な世界を行き来しながら、途絶えることのない感情のざわめきが、静かな輪唱のように、徐々に解き放たれていく―現代を生きる私たちの寓話。見えない力に強いられ、記憶を奪われた女性の数奇な運命。“甘い水”をめぐって、命とはなにかを痛切に描いた著者渾身の最新長篇小説。
著者等紹介
東直子[ヒガシナオコ]
1996年「草かんむりの訪問者」で第7回歌壇賞受賞。2006年『長崎くんの指』(マガジンハウス)で小説デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kishikan
17
うーむ、シュールだなぁ。SFでもない、ホラーやミステリーでもない、っていうよりジャンルにこだわっちゃいけないんだろうね。読後、甘い水と輪廻転生という言葉が思い浮かんで、仏教の世界をも想像してしまったんだけど・・。そういう世界観を限りなく透明感のある文体で表現したかったんだろうな、「でも具体的にイメージしにくい」って、思わずひとりごちる。ある意味、村上春樹さんの表現方法にも似てなくはないが、東さんの方が白い靄がかかったような雰囲気につつまれ、心を刺すようなものは感じない。物語全体で表現する作家なんだろうな。2011/06/08
まさ
13
不思議な世界を垣間見たよう。人がとても大きな存在の中で何かしらの役割を演じる存在なのかと考えてしまう。もう何冊か読みながら東直子さんの世界観を感じ取りたいな。2019/02/23
guu
12
これは東さんの著作の中でも飛びぬけて不思議不思議の浮遊感漂う物語でして、繋がりの見え難い連作形式と謎に満ちた掴みどころのない内容の数々に正直戸惑いを覚えたのも確かなのですが、自分の役割や生きる術をただ遂行するのみの登場人物たちがたまに覘かせる小さな感情の揺れが堪らなく胸に響くんですよね。漠然としか理解できてないなりに解釈するとこれは寓話の類で、食物連鎖や生命の循環を擬人化することでこの世を構成する全てが<命>であるということを暗に指し示した作品なのかもしれません。現時点での最高傑作という点には納得です。2010/11/23
まみ
9
ふしぎ。もしかして最後に収束してつながりがわかるのかな、と思ったらそうでもなくて、ぽーんと放り出されてうまく現実に戻ってこられない感じ。でもそれは嫌な感じではなくて、ここちよいのです。ひとりが何人ぶんもの人生を生きたり、何人もがひとりぶんの人生を生きたり、死んだものが次の命につながっていったり。命というものは肉体ではなく記憶や魂にこそあるもの、ということをあの小さいひとたちは知っていたのかなと思う。そうだとしたら体はかるく、こころはさみしい。2011/08/13
雅
7
不思議な感覚になる。2018/03/21