内容説明
千年以上に及ぶ広大なイスラーム世界の多様な芸術を「アラビアン・ナイト」というキーワードのもとに誰にも親しみやすく平易に読み解く、異色の入門書が、「墓廟建築(お墓の話)」を新たに加え、増補版にて再登場。イスラーム芸術文化の薫りと愉しみが、魔法のように立ち上がる。
目次
第1章 ハールーン・アル・ラシードとバグダードの都―初期イスラーム時代の宮殿建築
第2章 「黒檀の馬」とアラブの科学書―紙と写本の文化史
第3章 アラジンと不思議なランプ―イスラームの華、ガラス工芸とモスク・ランプ
第4章 真鍮の都と魔人の金属器―ソロモン王伝説と金属工芸
第5章 海のシンドバードの冒険―東西交易の主力商品、絹・香料・陶器
第6章 アフマッド王子と妖精パリ・バヌー―空飛ぶ絨毯とソロモン伝説
第7章 アラブの羽衣説話「バスラのハッサン」―ワークワーク伝説とイスラーム文様
第8章 カマル・ウッ・ザマーンとブドゥール姫との物語―満月と三日月の表象
第9章 狂恋の奴隷ガーニム・イブン・アイユーブの物語―『アラビアン・ナイト』イメージと墓廟建築
著者等紹介
小林一枝[コバヤシカズエ]
早稲田大学大学院文学研究科藝術学(美術史)専攻修士修了、博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、横浜国立大学、金沢大学講師を経て、1997年4月より早稲田大学国際部(現:国際教養学部)の講師を勤める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
351
「アラジンと魔法のランプ」や「シンドバード」のようによく知られたお話を9つ『アラビアンナイト』から抽出し、そのそれぞれを核にイスラーム美術を語っていくといった構成。入門編としてはとっつきやすくはあるが、残念ながら紹介される美術品が少なく、また体系性にもやや欠けるようだ。例えば絵画を例にとれば、マムルーク朝(14世紀)の後にアッバース朝(13世紀)が登場するのはともかく、19世紀の絵本の挿絵やアーサー・ラッカムが併置されていたり。一方、考察は「アレクサンダー大王と物言う木」と「三才図絵」の関係など拡がりを⇒2022/12/27
Meroe
4
『アラビアン・ナイト』の物語に沿った東方のイスラーム美術入門。『自動機械仕掛けの書』、ランプ、金属器、絨毯、霊廟建築など。「アラジンの魔法のランプ」は中国が舞台の、中東の人たちにとってもエキゾチックなファンタジーだったという。各章の扉に説明なくヨーロッパ人による『アラビアン・ナイト』の絵があるのはどうなんだろう、最終章でヨーロッパ人によるオリエント趣味的な中東イメージに触れているのに、この本もそのようなイメージを増幅させるのに一役買ってしまっている気がする。2012/06/05
naoto
1
イスラーム美術…絵や絨毯、工芸品や建築物など…の本。NYのメトロポリタン美術館でもイスラム美術コーナーは好きな展示なので、とても興味深く読んだ。各章の冒頭に「アラビアンナイト」の一説が出てきて、一度「アラビアンナイト」も通しで読んでみたくなった。2023/09/05