内容説明
東京と神奈川の境界を流れる多摩川は、また一方で、現世と来世の境を意味し、自然堤防の外側に広がる河原は、封建領主の権力に秩序づけられることのない特有な空間であった。本書は、流域にのこる民俗信仰のなかに「川」のもつ精神史的な意味を問い、さらに、上流から河口域にいたる風土的な特色を概観し、江戸の防衛、渡船の運営、遊興空間の形成、用水の開削、砂利採掘など、多摩川をめぐる人間の営みの歴史を、さまざまな側面から浮き彫りにする。
目次
第1部 多摩川―そのイメージ(玉川の精神史;多摩川流域の風土)
第2部 境界の風景(中世の多摩川;江戸防衛と多摩川;渡船場の景観;遊びの空間)
第3部 自然と人間(治水と利水;砂利採掘―多摩川の荒廃)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
楽駿
8
読書会仲間本。川の持つ意味。現世とあの世との境目と捉えた時代、川は神聖で畏怖するものだった。川を人間が抑え込めた、と、思ったあたりから、多摩川の自然が損なわれていったらしい。その時代に合わせて、多摩川は意味合いを変えた。今、窓からのぞむ多摩川は、どんな風に、また変わって行くのだろうか。大変、面白い考察でした。2016/06/21
aeg55
1
次読む本のためにこの本と前の本を読んだ 府中に生まれ育った自分にとっては短な存在であったはずの多摩川に様々な歴史があったことに驚く 明治以降の東京の発展と引き換えに、多摩川そのものを荒廃させてきた経緯に関しては胸が痛む 特に砂利採掘と鉄道建設に関しては、恐るべき所業と言っても良い (辺野古の海への土砂の搬入も同じ文脈である)2018/12/13