内容説明
和解へと昇華された移民文学!500年を超えて強いられる逃避行、その怒りを祭りの炎に抛擲!!
著者等紹介
アバーテ,カルミネ[アバーテ,カルミネ] [Abate,Carmine]
1954年生まれ。出生地のカルフィッツィ(カラブリア州クロトーネ県)は、南イタリアに点在するアルバニア系住民(アルバレシュ)の共同体のひとつ。南伊プーリア州のバーリ大学を卒業後、ドイツに移住。1984年、ドイツ語による短篇集『かばんを閉めて、行け!(Den Koffer und weg!)』を発表し、作家としてデビュー(1993年、同作のイタリア語版『壁のなかの壁(Il muro dei muri)』を刊行)。1990年代半ばに北イタリアのトレント県に移住し、現在にいたるまで同地で生活を送る
栗原俊秀[クリハラトシヒデ]
1983年生まれ。京都大学総合人間学部、同大学院人間・環境学研究科修士課程を経て、イタリアに留学。カラブリア大学文学部専門課程近代文献学コース卒(Corso di laurea magistrale in Filologia Moderna)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
巨峰
88
アバーテの作品を読むのは4作目。移民として他国に労働者として働かざるをえなかった父とその息子マルコ、その家族の物語。故郷に後ろ髪をひかれながらも妻のため、子供の教育費や食費を稼がないといけない父は1年のうち冬しか自宅で子供たちと過ごせない。そんな父と、それから母に愛されてすくすくと?育つ息子と妹そして腹違いの姉。喪服で過ごす祖母、そして賢い愛犬。マルコの病気、姉の不倫、小さな家族にもいろいろあるけど、不在の父の存在が家族には大きい。世界が、移民問題に揺れる今現代性のある物語としても捉えることができる。2018/12/05
キムチ
45
題は移民である父が故郷ホラへ戻って過ごすナターレ(クリスマス)での想いや様々な情景を表すのだが、実はさらに複雑。語りは少年の視点と父親の昔日を織りなすように展開していくので最近はやりのパターンながら読み辛い。だが、字は大きいし行間がゆったりでさらりと読める。南伊の小さな自治体アルバレッシュの架空の村ホラ。向こう見ずの犬スペルテイーナと共に野山を駆け回る少年は方言でいわれる【崖っ子】ふと出会う白髪交じりの旅人、彼と肉体関係を持つ義姉を通して見えてくる複雑な状況。ラスト義姉が生地 仏へ行くのも帰郷なのだろう2024/04/14
belle
9
15世紀末にオスマン帝国の侵略からイタリア南部へ逃れてきたアルバニアの人々。テレビで彼らが住む町の映像を見たことがあった。さて今回の物語は、行くと帰るを繰り返す父と彼を待つ息子を軸に展開する。異国へ働きに出た父の帰郷はナターレ~Xmas~の火が燃える祭りの時だ。一緒に過ごす時は短く、長い不在の間も子は父を慕う。そして子は成長し、鞄は炎の中へ消えた。「愛」がすべてと思われて、私は熱くなる。訳者はジョン・ファンテ作品と同じく栗原俊秀氏。最新作の邦訳は決まっているのだろうか。2018/02/20
ガブリエル
2
最近競い合うように2つの出版社(と翻訳者)から邦訳がでているアバーテ。本作は、アバーテらしい移民ものというより物語の語り手である主人公の瑞々しくて短い少年期と家族の物語。犬ちゃんが無事でよかった。2017/03/28