内容説明
夭折の詩人レールモントフ唯一の完結した小説にしてロシア文学史上、常に掲ぐべき傑作。雄大なコーカサスの自然を背景にのちのドストエフスキーによってより鮮明に展開される自己中心主義等、人間の病的心理を初めて描きロシア的テロリズムの源流ともなった作品。
著者等紹介
レールモントフ,ミハイル[レールモントフ,ミハイル] [Лермонтов,Михаил Юрьевич]
1814~1841。モスクワ生まれ。詩人、小説家。プーシキンの死に衝撃を受けて書いた『詩人の死』が多くの人に筆写されて流布し、詩人として認められた。その批判精神のため危険人物として早くから政府に監視され、政治的謀略による決闘で死去。行年27歳
北垣信行[キタガキノブユキ]
1918~1981。茨城県出身。北海道大学助教授を経て、東京大学教養学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やまはるか
19
1840年発表のロシア文学、短編集というべき内容が、形式的に一つに繋がっている。旅先で同宿した老大尉の語る話と、ペルシャに旅立つペチョーリンが捨てていった日記を基にした話で構成される。「現代の英雄」について作者は前書きで「現代にはびこるさまざまな欠陥からつくり出された肖像画なのだ」と述べ、訳者は犠牲者としての英雄と言うが、犠牲によって何かが果たされたとも読めず、英雄の意味は判然としない。決闘で撃ち合って相手を死なせる場面があるが、レーモントフ自身が1841年に決闘で撃たれて死んでおり正に「現代の物語」。2025/09/13
douglus0813
3
ペチョーリンという1人の男を描いた作品ではあるが、その形象は時代の形象でもある。作品が書かれた時代を鑑みると、この形象の意味がより明らかになるかもしれない。しかし、この作品に描かれたものは決して一過性の、ある特定の時代にのみ見られるものではない。ペチョーリンは私であり、あなたであり、彼であり、私たちであるように思う。内容、形式、描写どれをとっても素晴らしく、特に美しい詩的な自然描写には心を奪われる。2020/10/05
takao
1
ふむ2025/07/03
ときのき
0
読んだ!2014/05/05