著者等紹介
工藤正廣[クドウマサヒロ]
1943年青森県黒石生まれ。北海道大学卒。現在同大学名誉教授。ロシア文学者・詩人(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
142
ジバゴの生活に絡めてソビエトの歴史が語られる。むしろそれが書きたくてこの形をとったのだろう。日露戦争後の革命。スローガンに踊らされ、革命でパンが食べられると思っても、手にしたのはひどい飢え。しかし、ロシア文学を読んで思うのは、この状況に笑いをまじえられることだ。ソルジェニーツィンにしてもしかり。グロスマンにしたって、あんなに酷いことを書くのに、どこかに乗り切れる救いがあって、読み手は心が痛んでも絶望はしない。辞退を強要されたとしても、ノーベル賞が決定したことでパステルナークは報われたはずだと信じたい。2017/02/22
藤月はな(灯れ松明の火)
85
「これで平等になれる」と希望を持って人民は革命を起こした。その果てに待っていたのは飢えと裏切りの荒廃があるばかり。しかし、医者であり、詩人でもあったジゴバや人々は時に笑い、苦悩し、歌い、生きていた。彼らの営みは歴史上、記憶にも残らないものなのかもしれないが、確かに愛おしむべきものだった。これはソビエト大河史であると同時に、互いに愛し合っていたけど、決して一緒になることはなかった男女の物語。2017/10/24
佐々陽太朗(K.Tsubota)
79
まず率直な印象として「重い」。745Pのハードカバー。1,128gあった。読書が筋トレになります。値段8,800円も重い。物語の中身も歴史の重みとでも言おうか。ロシア革命前後の歴史を知ったうえで読まないと理解できない。登場人物やよく解らない言葉をインターネットで調べ、起こった出来事をロシアの年表に照らし合わせながら読んだ。パステルナークがノーベル文学賞を受賞することが決まったとき、旧ソ連当局に辞退させられ市民権も剥奪されたという事実も重い。訳が酷い。翻訳者が意図的にそうしたようだが、とにかく読みにくい。2020/08/31
syaori
31
ロシア革命を背景に、ユーリー・ジヴァゴとラーラの生涯を描いた物語。大河小説らしく沢山の人々が登場し、この人々の織り成す事件や人生が絡まりあって雄大な物語が織り上げられていきます。作者は詩人だけあって、戦争や混乱の時代を描いてもどこか詩的で、象徴的な人や物(どこか物語から浮き上がっている謎の多いジヴァゴの異父弟エヴグラフのほか、何度か出てくる《モローとヴェトチンキ。播種機。脱穀機》の広告を張った柱、雪のナナカマドなど)も出てきて、近現代が舞台なのですが、壮大な神話か叙事詩を読んでいるような気分でした。 2016/06/03
風に吹かれて
15
20世紀初頭から第二次世界大戦後という革命から始まる40年間のロシアの地に生きる人々を描く。赤軍、白軍、そして非正規軍であるパルチザンがときに虐殺に至る戦いを行うなか、荒廃した大地を人々は受難に耐えるように生きる。そういった時代がどのようであり人々がどのように生きていたのかが細部まで描かれた素晴らしい小説だ。人間の歴史のひとつの断面を記すものとして世界遺産級の作品だと思う(世界遺産は、いろいろと……たくさんあるが……)。➡2021/05/13