出版社内容情報
ボリース・パステルナークは浪費の作家である。尽きぬ愛を惜しみなく流出する。パステルナークは画家である父と音楽家である母との間に生れ、幼少時からトルストイ、リルケ等多数の芸術家に囲まれる環境に育った。1922年、第三詩集であり恋愛詩集でもある本書『わが妹人生』で著名詩人となる。1958年ノーベル文学賞拝受。「いとおしい存在にむかって呼びかけられている気がする」というのは吉増剛造氏だが、パステルナークの詩は音楽であって、その韻律はロシア語ロシア人の心身にとって自然そのものと言われる。日本で言えば絶妙な短歌的世界の韻律とでも言うべきか。ロマン『ドクトル・ジバゴ』で描いたように、人間とは何か、自然とは何か、そういう根源を、これまでにない詩的スタイルで創造しなおしてみせた。『わが妹人生』は「いとおしい存在」=人間の根源・自然の根源への無限接近だが、二十世紀を代表する抒情詩の白眉といえよう。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
cockroach's garten
16
パステルナークのテーマは一貫して愛である。ドクトル・シヴァゴに描かれているようなロシアの動乱期の中でも愛の炎は愛おしく燻り続けた。それに加えて彼が亡命を選択せずに祖国に残った大きな温もりを持つ大いなる自然の数々。それが哲学的思索とあいまって紡がれる詩の煌きは壮大で愛おしく美しい旋律を奏でている。本書には真っ直ぐな伝えづらい愛の囁きが甘美の音色を奏でられている。2018/09/26
吟遊
6
表紙のパステルナークがイケてる。こんなジャケットずるいというくらいかっこういい。第三詩集とのことだが、32歳のときに完成させている。わが妹とは、五年前に激しい恋をした少女のこと。恋愛の一年足らずを詩を重ねて物語にしている。とはいえ、難解な言葉遣いでストーリーは見えにくい。訳者の心配り、解説がすごくよい。2015/12/08
月
3
パステルナーク第三詩集。はじめに読んだときは、背景を何も知らずにやや戸惑いのようなものを感じながらも不思議な読後感が残ったが、巻末の訳者による解説・エッセーを読み、この詩集の重みを感じた。 そして、改めてこの詩集と対峙(再読)すると見えなかったものがよく見えてくる。パステルナークの詩の邦訳は難しいと思うが、言葉のみでなく視覚的でもあり、聴覚的でもあり、詩人の精神の調べ(叫び)を奏でているようである。 2023/05/12
白猫の単語
3
わがいもじんせい・・不思議なタイトル。「その韻律はロシア人の心身にとって自然そのもの日本で言えば絶妙な短歌的世界の韻律と言うべきか」とあるけれどロシアの人はこの詩をどんなふうに鑑賞しているんだろう。数時間だけロシア人になって味わってみたい。言い回しに馴染めず詩の世界に入りこめなかったから。画家のお父さんの絵が良かった。2015/11/17