内容説明
―するとどこかで、ふしぎな声が、銀河ステーション、銀河ステーションと云う声がしたと思うと、眼の前がさあっと明るくなり、気がついてみると、ジョバンニは、親友のカムパネルラといっしょに、ごとごとごとごとと小さな列車にのって走っていたのだ―。銀河を走るその鉄道は、人々の透明な意思と願いとをのせて、生と死のはざまを、かけぬけていく…。「翳り絵」で描かれた『銀河鉄道の夜』。
著者等紹介
金井一郎[カナイイチロウ]
1946年、埼玉県で生まれる。生家は明治から大正時代にかけての日本絵本の創成期に名を残す「金井信生堂」。十代の終わり頃から影絵での制作を始め、その後「翳り絵(かげりえ)」の手法を見い出し、五十年近くにわたって「銀河鉄道の夜」の絵の制作を続けた。絵画制作のほかに、乾燥させた植物の中に小さな光を仕込んだ灯りや、物語性にあふれるオブジェなども制作している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
103
銀河鉄道で幻想的な旅をする二人の少年ジョバンニとカムパネルラ。あまりにも有名なこの物語の季節は何だっただろう。おぼろげな記憶を確かめるためにミキハウスの美しい絵本で再読しました。線路の縁に咲く、月長石で刻まれたような紫色のりんどう、イチイにリンゴ、プラタナス……『銀河鉄道の夜』は秋の物語でした。群青色の背景にキラキラ光る白が美しい金子一郎氏の静謐な絵。カンパネルラはりんどうの仲間『カンパニュラ』からの連想かな。ちなみにりんどうの花言葉は「悲しみにくれているあなたを愛する」だそうです。2013年10月初版。2015/10/31
♪みどりpiyopiyo♪
51
『銀河鉄道の夜』挿絵を楽しむ本 読み比べ。金井一郎さんは「翳り絵(かげりえ)」という独自の手法を編み出し、本作の絵画化に50年の時をかけたそうです。■「翳り絵」は、黒いラシャ紙に針で孔をあけ、その後ろから光をあてて浮かび上がる光の粒の集積によって表現されます。基本的に二枚の紙を使い、それぞれに別々の孔をあけ、それぞれアクリル板の間に挟んで重ね合わせ、光を透過するとか。ほとんど下書きをせず1発勝負なんですって! ■これ、生で見た方が何倍も素敵なんだろうなぁ。原画を見てみたい作品です♪(2013年)(→続2018/09/09
あーさん☆GWは墓参りをハシゴしました。暑くてバテました。
51
翳り絵と言う絵が凄い!!Σ( ̄□ ̄;)2018/05/15
小夜風
41
【図書館】表紙からしてこの絵は一体どんな風にして描かれているんだろう、と思ったら、金井一郎氏自身が「翳り絵」と呼ぶその絵は、黒いラシャ紙に針で孔をあけ、後ろから光を当てて浮かびあがる光の粒の集積とのこと。この絵が銀河鉄道の世界観に本当に合っていて、ため息が出る程美しかったり、ゾッとする程怖かったり……見ていると吸い込まれそうになりました。挿し絵が賢治の言葉の美しさを更に際立たせていて、ああキレイだな、キレイだな……本当に、何度読んでも惹かれるなぁと、じんわりしました。手元に置きたい一冊。2015/06/22
テツ
31
ジョバンニとカムパネルラ。瞬くように過ぎ去った銀河鉄道でのひととき。瞳に映るのは様々な景色。心に刻まれるのは様々な人たちとの出逢いと別れ。その度にジョバンニの世界に対する自分の在り方についての考えは成長していく。そして他者を救い、ほんとうのさいわいに至るために自らを擲ったカムパネルラとの永遠の別れ。美しく哀しい銀河鉄道の旅から戻ったジョバンニはこの後どう生きたのか。この先彼が悲しみに包まれても星空を眺めればきっとカムパネルラを思い出せる。そしてほんとうのさいわいに至るように生きていけたんだと信じている。2017/01/10