内容説明
「もうよだかは落ちているのか、のぼっているのか、さかさになっているのか、上を向いているのかも、わかりませんでした。ただこころもちはやすらかに、その血のついた大きなくちばしは、横にまがっては居ましたが、たしかに少しわらって居りました。」泣きながら、のろしのように空へと突き進むよだか。切り裂くような哀しみと祈りは、青い星となって、いまも静かに燃えている…。
著者等紹介
ささめやゆき[ササメヤユキ]
1943年、東京生まれ。1970年にパリへ渡り、翌年ニューヨークへ。1972年再びフランスに戻り、シェルブール美術学校へ通う。1973年に帰国。帰国後、銅版画をはじめ、本の挿画、絵本などを手掛ける。1974年銀座あかね画廊にてフランスで描いた絵の展覧会開催。1983年東京セントラル美術館版画大賞展入選。1985年「ルーが来た日」がベルギー・ドメルホフ国際版画コンクール銀賞受賞。1995年『ガドルフの百合』(宮澤賢治・文)で小学館絵画賞受賞。1999年講談社出版文化賞さしえ賞受賞。2001年『あしたうちにねこがくるの』(石津ちひろ/文 講談社)で日本絵本賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
tokotoko
37
映画通のお気に入りさんに教わって観たDVD、「さいはてにて」。その中で出てきた絵本が気になって、早速!!図書館で借りてきました。映画の主人公が「よだかは私みたい。」って言うんです。そうなのかぁー、似てるんかぁー、って思いながら読んだけど、その共通点はよくわかりませんでした。けど、「自然は厳しい。」、ということは、よーくわかりました。2016/02/25
chiaki
32
挿絵比べに読みました。とてもシンプルに描かれたよだかが、青や黒が織り成す世界のコントラストに映え、やがて溶け込む…。こちらの絵もまたとても幻想的で素敵でした。すっかり力尽きたよだかが、最後の力を振り絞りながら星空へと翼を広げる場面の絵がとても印象的!2020/09/13
gtn
31
醜いと皆に馬鹿にされ、存在自体否定されたからこそ、宇宙の大生命に溶け込むことができたヨタカ。小さなプライドを守るために、ヨタカを虐げた者どもは、その安穏の境涯さえ覚知することができず、世法に振り回されて一生を終える。2021/07/22
ヒラP@ehon.gohon
30
「ヨダカ」という名前のために、この鳥はこんなに苦しいのです。「市蔵」でもよかろうと思うのですが、それで済む話ではありません。 姿かたちで馬鹿にされる存在感がたまらないのです。 今の社会で言えば、障がい者への偏見や差別につながる根本的な問題です。 ヨダカの最期にはたまらない切なさを感じました。2022/12/12
Kikuyo
28
何度も読んだお話だけど、絵が自分にはしっくりこなかった。 誰からも嫌われ邪魔者もの扱いされ、星に願ながら暗い夜空をキシキシキシキシと叫びながら上昇していくよだか、胸がしめつけられる。 最後は青く燃える星となる、すぐとなりはカシオペア座。よだかは 悲しみと絶望を味わい尽くし、 この地上の暗い世界からは解放され、 安らいだ世界に辿り着けたのだろうか…。2017/10/06