出版社内容情報
『苦海浄土』三部作の中でもっとも重要な位置を占める作品! 普及新版として復刊!!
第一部「苦海浄土」、第三部「天の魚」に続き、40年を経て完成した世界文学『苦海浄土』三部作の核心。
「本書は69年の患者家族の提訴から翌年のチッソ株主総会への参加、そして運動が分裂し始めた時期までを扱っている。(…)しかし単に第一部と第三部をつなぐだけではない。水俣病の世界を重層的に織り上げて、第一部と第三部を包含する、深く広やかな詩的宇宙を生成した」(栗原彬氏 2006年12月共同配信より)
「『第二部』はいっそう深い世界へ降りてゆく。それはもはや裁判とも告発とも関係のない基層の民俗世界、作者自身の言葉を借りれば『時の流れの表に出て、しかとは自分を主張したことがないゆえに、探し出されたこともない精神の秘境』である」(本書解説=渡辺京二氏)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
30
とにかくまずは美しい。企業と国、つまりは我々に故もなく殺され尊厳を奪われた一人ひとり。普通は共感すら許されないだろう、でも、義春さんのミツバチの話、御詠歌を「はかなき恋」と詠うおばちゃんたち、さらに時系列いったりきたりの石牟礼自身の来し方に、気付けば自分がその世界のなかにするりするりと入っていく…、だからその後の、大阪でのフミヨさんの言葉、総会での社長に詰め寄る姿、それはもはや他者のものではなくて、恥ずかしながら自分もまた石牟礼さんと同じようにそちら側にいる、その申し訳なさよ。◇水俣弁がまた何とも素敵で。2019/05/08
南包
4
これほどに哀しい話が何故か美しい。ミツバチを飼う人の話、解剖された娘を連れて帰る母の話、ムラサキ貝を採る女たちの話、チッソ株主総会の話。皆、詩のような言葉の連なりである。 それに引き替え、元総理が次官の時の話は醜いの一言である。 2014/07/10
林克也
2
池澤夏樹の編集版で読んでから、今回で2回目となる「苦海浄土」第二部。石牟礼道子さんは、この事実を、なんでこんなに美しい文章、言葉で書き表すことができるのか。これは”文学”という括りにはできないと思う。もし”神”が、いるとすれば神が彼女に宿って書いた物語である。2014/05/09
18■136
0
「かねてみずみずしい大きな彼女の眸の色がさっと蒼白になった。」パルスみたいな心の動きを捉えるのがすごい。2021/08/21