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内容説明
外交官の娘としてマドリードに来たブランカ・アリアスは、若くしてロリア侯爵と結婚する。若さ、富、美貌、すべてを備えた侯爵夫人に唯一欠けていたのは、夫との“愛の達成”だった。未亡人となりながらも快楽を追求し続け、さまざまな男性を経験するブランカにおとずれるものとは…!?軽妙なタッチで人間の際限ない性欲を捉え、その秘められた破壊的魔力を艶やかながらもどこか歪に描き出す、ドノソ的官能小説!!
著者等紹介
ドノソ,ホセ[ドノソ,ホセ] [Donoso,Jos´e]
1924年、チリのサンティアゴのブルジョア家庭に生まれる。1945年から46年までパタゴニアを放浪した後、1949年からプリンストン大学で英米文学を研究。帰国後、教鞭を取る傍ら創作に従事し、1958年、長編小説『戴冠』で成功を収める。1964年にチリを出国した後、約十七年にわたって、メキシコ、アメリカ合衆国、ポルトガル、スペインの各地を転々としながら小説を書き続けた。1981年にピノチェト軍事政権下のチリに帰国、1990年には国民文学賞を受けた。1996年、サンティアゴにて没
寺尾隆吉[テラオリュウキチ]
1971年、愛知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。現在、フェリス女学院大学国際交流学部教授。専攻、現代ラテンアメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ユーカ
24
ラテンアメリカ文学において、はちきれんばかりの若い肉体を持ったアッパークラスの女性の性衝動を、いかに優雅に表現できるか?と言えばやはりドノソの手によるものなのだろう。リョサもなかなかやるが、匂いまでしてくるのはドノソ。あと「恥」の表現がべらぼうに上手いし、それがだんだん無くなって、頭がぶっ飛んじゃう感じがなんとも言えない。多くが猛獣みたいなラテアメ文学に疲れちゃった人には良い舌休めになる、ひたすらセクシーなだけの小品。いい加減「別荘」を読まにゃ。2016/04/19
かわうそ
22
官能小説風味の軽妙なドタバタ劇という感じで難しく考えずにサクッと読める。犬の使い方が巧いですね。2015/10/11
saeta
9
ドノソのグロくない軽めの官能小説。官能小説と言うとバルガス・リョサなんかも書いてたし、さほど珍しいジャンルではないのかも。やはりドノソは、「夜のみだらな鳥」や「別荘」のようなくどいまでの濃密な世界観が好きだな。2017/06/13
てつや
8
びっくりするくらいの官能小説なのですが、それよりも「失踪」ですよ、びっくりしたのは。 えええ? っていう感じでした。 いや、どう考えればよいのやら。。 「まさに官能小説ですよね」って思いながらフンフンと読んでいたらいきなりやられました。 うーむ。。。 2017/05/26
麩之介
7
エロティックかといえばエロティックなんだけど、なんともドタバタ喜劇的で、これ官能小説のパロディを目論んでるのかと思いつつ読み進めていたが、犬が登場した途端、俄然面白くなった。ブランカの鏡としての、また『境界なき土地』でも重要な役回りであった、破滅の先触れとしての犬。ドノソの日記に記されていた「ヘンリー・ジェイムズ的趣」というのが「新大陸の無垢な魂が旧大陸の頽廃によって破滅に追い込まれる」というテーマならば、奔放な若き侯爵夫人が失踪し、ルナが「忠実な老犬」となり旧世界にとどまるのは、そういうことなのだろう。2020/10/10