内容説明
万年二等兵のブリュは、オールドミスで二十も年上の小間物屋ジュリアに見初められ、結婚する。一人で新婚旅行に行くはめになったり、店番をしながら時計の針の動きを追いかけたり、界隈の犬どもを垂れ流す糞の固さと色で識別しようとしたり、マイペースでどたばた続きの毎日。戦争が近づくとともに、ブリュ夫婦の身辺にも変化が起こり…。俗世ばなれした、とぼけた主人公が味わい深い、クノーらしさ溢れるドタバタ喜劇。
著者等紹介
芳川泰久[ヨシカワヤスヒサ]
1951年、埼玉県に生まれる。早稲田大学大学院後期博士課程修了。現在、早稲田大学文学学術院教授。専攻はフランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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兎乃
7
クノーがヘーゲル哲学を受容した状況や 本書の執筆に至る経緯を知ると クノーらしさ満載のこのただならぬ小説がさらに面白さアップ。日常生活をコミカルに且つユーモアたっぷりに描き、笑ったりしながら読める本でありながら、クノーは小説という手法で哲学的著書をこっそり残している、と思うの。翻訳もガッツリと作品に向き合っていて、凄~い。2012/07/14
pyoko45
6
のらりくらりと展開するつかみどころのない話。さり気ない手つきで繰り出される言葉遊びとユーモア。クノーらしさ溢れる作品。始終ニヤニヤ笑いを浮かべながら読みました。2012/04/14
きりぱい
4
一人の兵士を勝手に結婚相手と決めているオールドミスの姉とそれを品定めする既婚の妹。兵士は25歳くらい。姉は推定50歳。え?・・それがいきなり結婚。意外に仲の良い夫婦ぶりにほっとするものの、唐突に経過がすっ飛ばされたり、呼称がころころ変わる人がいたり、物語はあっさりしているようで普通ではない展開。第一次と二次の戦争の合い間という日常にあって、どこまでも人のいいブリュに、読み心地は穏やかで面白い。レストランで絵葉書を書く場面と占う場面が好き。2013/01/18
カトキチ
1
展開/文体ともにひっちゃかめっちゃかで、笑えるという意味においては「ザジ」をこえるし、口の悪い登場人物が勢揃いなのも「らしい」作品。会話していると同時に各々の思想が飛び込んで来たり、改行せずに1ページ以上にわたってセリフが出てくるなど文章がおもしろく、それを的確に訳した訳者のおしごとも大変素晴らしい。言葉遣いを古臭くしなかったのが勝利の要因か。出会った瞬間にキスの雨あられを喰らわすというのは映画版の『地下鉄のザジ』の冒頭を彷彿とさせるが、もしかしたら映画版はクノーの全作品の文体を意識したりしたのかも。2012/07/04
chico
0
1950年代には新しかったという、フワフワしてとらどこえろのないストーリー。年上の後家と結婚したヴァランタンのスケッチという感じ。突然場面が変わったり、時間が経っていたりする。主人公は、小さな店を任されるが、暇を持て余し、飄々と生きている。