内容説明
「あなたにとって幸福とは何ですか?」という問いかけに、大勢の人々が「昼寝」や「テレビをみること」、「美味しいものを食べること」と答えているのを見たならば、あなたはそれをどう感じるだろう。“私たちの時代に失なわれてしまっているのは「幸福」ではなくて、「幸福論」である”と記す著者が、古今東西の「幸福論」に鋭いメスを入れ、イマジネーションを駆使して考察した新たなる「幸福論」。
目次
マッチ箱の中のロビンソン・クルーソー
肉体
演技
出会い
性
偶然
歴史
おさらばの周辺部
著者等紹介
寺山修司[テラヤマシュウジ]
1935年、青森県生まれ。早稲田大学中退。67年、演劇実験室「天井桟敷」を設立。演劇・映画・短歌・詩・評論など意欲的に活動。83年、敗血症により47歳で逝去
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
里愛乍
40
既存する書物から映画から舞台から歌謡曲から、そこにある言葉や体験から考察される「幸福論」。覚悟とは変身の思想、出会いとは他人、必然は社会的・偶然は個人的(このリストがまた面白い)「知らぬふり」と「知ろうとしない」等々、唆られる言葉とその先の想像や思考が論じられていて、中でも「性」の章が一番いきいきとしているなぁと思いました。加賀まりこや風吹ジュン、佐良直美を若干ながら知っていた自分は、少しでも寺山修司と時代を共有してたんだと思うと感慨深いものがありますね。2017/12/22
北風
38
感想の書きにくい本です。いつもの寺山修司とは、ちょっぴり違います。しかしやはり寺山修司の書くギャンブルの話は涙がこぼれそうになるほど切ない。印刷所経営のおっちゃんの話でブワっときました…。2015/03/19
UC
18
積みから読了。この前友人が寺山修司のセリフを引用してたのを聞いて「久々に寺山修司を読むか」と思い立った次第。まだ読んでいなかった寺山修司の『幸福論』、好きな作家の一人に寺山修司を挙げていますが、おそらく今まで読んだ彼の本の中でも一番難解だった。まだ読むのが早かったと思いたいけど、これを理解できる日はおそらくこないだろうなぁ。2016/07/11
サンノート
18
寺山修司は書物の窮屈さや無反応性が嫌いらしい。読書している時間は行動を止めているときだとさえ言う。ちょっと気持ちがわかるのは、いま自分が外でなにかをしていた方が楽しいんだよね。散歩が楽しい。庭いじりが楽しい。読書はするけれども、それは自分にとっては家ですることであって、外出するときってあまり本は読まない。インドア寄りの人間だったけど身体や現実と向き合うことが多くなり、それがすごく楽しいんだ。寺山修司はくさるほど文学や映像に触れてきた人間だからこそ、肉体を動かすという別の世界がまぶしく見えたんじゃないか。2015/05/25
弥勒
12
<私は、ここまでかかって「自己の洞察に忠実な個人の行為が、現存するものにたいして闘争しつづける」ことの幸福論について書いてきたのだが、その幸福は想像力との二輪立であることによつて「想像力は権力を奪う」論理へ到達するのである。>かういふ幸福論を展開して見せた寺山修司さんのこの本はすごく面白かつた。彼の幸福論の根幹になつてゐるのは偶然性と想像力・創造力だ。必然的な幸福など存在しない。可変的で、偶然性による幸福こそが本物であり、<「幸福論」は、永遠に到達し得ない闘いの原理>なのだ。2015/11/13