内容説明
ドロップアウトした初老の元大学教授ゴハル、麻薬密売で糊口をしのぐホームレスの民衆詩人イェゲーン、革命を夢想する反抗的な下級役人エル・コルディ、頭の切れる男色家の警視ヌール・エル・ディーン―本書には、自由な生き方をする個性的な人物たちが登場し、ある犯罪をめぐってそれぞれの思惑を交錯させる。果たして、奇妙な展開をみせる物語の顛末は。
著者等紹介
コスリー,アルベール[コスリー,アルベール][Cossery,Albert]
1913年エジプトのカイロに生まれる。十歳からフランス語で文章を書きはじめ、30年、十七歳のとき勉学を続けるためにパリに赴き、そのころのモンパルナスの生活に魅せられる。31年、カイロで処女短編集『神に忘れられた人々』を上梓したが、検閲処分を受け、以後アラビア語で執筆することはなくなった。45年9月よりパリのサン=ジェルマン=デ=プレのホテルに居を定め、フランス語で創作活動を続けた。90年には彼の全作品に対し「フランス語圏文学大賞」が贈られ、2005年には全集が刊行されるなど、近年、評価が高まっている
田中良知[タナカヨシトモ]
1947年盛岡市に生まれる。東京都立大学大学院修士課程修了。専攻、十九・二十世紀フランス文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゅー
7
原題は『誇り高き乞食たち』とのことで、富も名誉も持たないゴハル教授たちの、持たざるものゆえの自由と誇りに焦点が当てられている。とは言いつつも老教授ゴハルの哲学、人生観には納得がいかない。彼はある重大な犯罪を犯すのだが、それについて責任を放擲し、悠々泰然と生きている。私には「誇り高き乞食たち」というよりも、たんに人生に対して無神経なだけのように思えてきたのは残念。お金はないけどしょうがない、罪を犯したけどしょうがない、縛り首になってもしょうがないではなんとも言いようがないではないか。2016/01/14