内容説明
年々再評価の声が高まり、今や英文学の古典としての地位を確立した吸血鬼小説の傑作が、本邦初の完訳にて甦る!さらに、『ドラキュラ』の冒頭部分として構想された短編『ドラキュラの客』、最新の研究成果に基づいた詳細な注釈・解説、貴重な資料等もあわせて掲載し、その恐怖に多面的に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
吉田あや
67
世界中の悪霊が我が物顔で歩き回る「聖ジョージの祭日」にドラキュラ城へと招待を受けたジョナサン・ハーカーを中心に、吸血鬼の魔の手と、勇敢に戦いを挑む人達を日記や書簡で追いながら読み進める冒険譚のような本作。陰惨で重々しいドラキュラの世界とは反対に、城へと続く道々は、林檎、すもも、梨、桜桃の果樹や、夥しい数の花が咲き誇り、木々の下の草むらには散り敷かれた煌めく花びら、緑生い茂る丘陵地、白銀に輝く白樺と、息をのむような美しさが広がる。恐ろしくも流麗な文章に、揺蕩う心地よさを堪能した。2018/08/20
eirianda
14
古典ホラーを読んで、吸血鬼の原点を考える。結局ホラーは、その時代の漠然とした恐怖、の仮想敵なので。巻末の『ドラキュラ』と文化研究によると、「ストーカーは自分に梅毒をうつした売春婦にたいして、こういう形で無意識のうちに復讐して…」「ヴィクトリア朝イギリス…に共有されていた…正常な女性は性欲をもたない(天使)である…(無性欲の神話)の影響下に、官能性を帯びた女性…を(悪魔)的…それを暴力的に破壊…」とか、ミソジニー男の性癖話になってて、驚愕。そして納得。ミーナは男の描く幻想女性だな。2015/12/01
トミーチェ
1
超有名古典文学。物語は知られた通りの流れ、映画版はよりロマンティックに脚色されていたことを知る。ミーナは理想的な、ほぼ完璧な女性として描かれ(完璧でないのは女性である、という一点のみか?)、彼女を愛するジョナサンは立派な人物。その仲間も善良で熱意溢れる人々。一方ドラキュラは吸血鬼である事実以上の特徴に欠け、後半ほど登場回数もインパクトも薄らいでいく。少々竜頭蛇尾な印象が拭えないが、ヴィクトリア朝的価値観満載、姓差や人種民族等に対する当時の反応がストレートで興味深い。2015/08/31
リドカ
1
註釈まみれで、註をいちいち追っていると、「ヴィクトリア朝イギリスをこう読め」と押し付けてくるかのような印象を受けてしまうので、註は適宜スルーした方が熱中できそうだ。気になる人は、最後の「『ドラキュラ』と文化研究」で説教を受けるか、共同翻訳者の丹治愛氏の『ドラキュラの世紀末』を読むべき。2011/08/22
ext3
1
平井呈一訳と比べながら読んでた。登場する器具やらについての解説が付いてたのが分かり易くて良い。あんま訳はよろしくないかな2001/10/17
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