出版社内容情報
地域に根ざした、安全で安心できる住宅を造るために――注目される「伝統木構法」の全貌と、住宅・木材・林業との連携方策を示した初めての本。日本の風土に適した“本当の豊かさ”を実現する住まいと街づくりを求めて、「新伝統木造運動」の全国展開を提案します。
はじめに(菊間 満) 3
Ⅰ 地域の居住と木造住宅建築(菊間 満) 17
1 地域の居住と住宅地場産業を守る 17
ハビタットが示した住文化のあり方と日本の現状 17
踏まえるべき、住宅のリサイクルと供給のオープンシステム原則 20
2 持ち家主義と住宅の商品化 23
日本の持ち家主義は、世界の中で得意なものである 23
シックハウス症候群は住宅商品化が招いた 31
建築業の経営規模は海外も日本と同じ中小規模 34
住宅の画一性と建築の地域性とは矛盾する 36
3 「在来工法」の住文化―木の文化は日本独自のものではない― 39
木造「在来工法」は汎世界性と地域性をもっている 39
日本の住文化を支えてきた「在来工法」住宅 43
Ⅱ 伝統木構法の再評価へ(増田一眞) 51
1 建築構法の選択はなぜ重要か 51
建築構法の重要性 52
2 伝統木構法の効用とは何か 56
建築構法十原則(現代建築構法批判) 59
・芯持材と芯去材の特徴を生かす 63
3 文化としての伝統木構法 71
4 伝統の知恵を継ぐ限り、木造は地震などでは壊れない 85
である職人と新伝統木構法(増田一眞) 121
1 職人の特質 121
2 現代生活における三つの断絶 124
第一の断絶―歴史性原理と伝統の否定 125
第二の断絶―内在性原理と主体性の否定 126
第三の断絶―総体性原理と連関の否定 127
3 伝統木構法から新伝統木構法へ―伝統の知恵と科学の融合― 128
4 新伝統木構法の基本骨格 130
5 美しい伝統の木組みを次代に伝えよう 132
街並みを守る 132
美しい街並みと住まいを次世代に残す事業を 135
6 地域での取り組みの紹介 137
むすびに ―新伝統木造運動の全体像と住宅地場産業―(菊間 満・増田一眞) 143
あとがき (菊間 満) 147
参考文献 151
著者紹介 155
本書の「むすびに」から(抜粋)
本書で提起している新たな伝統木造運動とは、日本の伝統的な木造建築技術を正しく継承するとともに、その構法をより高い立場で統一し発展させ、ゆるぎない木造建築構法と豊かな住文化を再興させようとするものです。いまや伝統木構法は高級なぜいたく仕事になってしまったという思いこみや、伝統木構法で家を建てたいけれど、どこに頼めばよいのかわからない、といった状況が見受けられます。しかし、伝統木構法は、ぜいたくでも高級でもありません。丈夫で永持ちして美しい、日本唯一の安心して住める木造建築の構法です。このような日本の風土に適し、幾多の名建築を世に送り出してきた伝統木構法による住宅の建築を広め、多くの人たちが抱いている住まいへの強い希求に応えることが、今日ほど必要とされている時はありません。
では、この運動を誰が担うのかといえば、運動を構成する中心は、①大工・工務店と全職種の職人集団です。そして、職人との同盟者は、②木構造と木造文化に関心を持つすべての設計者・研究者・批評家・ジャーナリストで、このグループは、建て主と作り手を仲立ちするサポート役として欠かせません。さらに、③林業、木材産業、自
内容説明
林業経済と建築構造という、分野の異なる研究者による共同作業から生まれた一冊。地域居住と木造住宅建築に関する歴史と現状及び問題点を、総論的に述べるほか、「在来工法」がもつ限界と問題点をふまえた上で、「伝統木構法」の再評価が必要であることを明らかにしている。その他、住宅問題の現状認識と解決方法を取り上げている。また伝統の知恵を汲む「新伝統木構法」の概念と内容について、総括的に説明。「新伝統木造運動」の全体像と住宅地場産業の課題として、今後の運動のあり方について述べている。
目次
1 地域の居住と木造住宅建築(地域の居住と住宅地場産業を守る;持ち家主義と住宅の商品化 ほか)
2 伝統木構法の再評価へ(建築構法の選択はなぜ重要か;伝統木構法の効用とは何か ほか)
3 住宅・国産材の「市場問題」と担い手の将来(住宅・国産材の「市場問題」の現実;沖縄県―木造文化と担い手の解体)
4 住文化創造の主役である職人と新伝統木構法(職人の特質;現代生活における三つの断絶 ほか)
むすびに―新伝統木造運動の全体像と住宅地場産業
著者等紹介
菊間満[キクマミツル]
1949年生まれ、東京都出身、山形大学教授、農学博士。1979年北海道大学大学院農学研究科博士課程修了、(財)林業経済研究所研究員、同81年山形大学助教授、同92年教授。主な研究分野は林業経済学・住宅市場論・労働者協同組合論・ロシア林業論。共立社鶴岡生協、鶴岡民商等と共同で地域の住宅問題等の研究会を組織。林業問題と住宅問題の解決に関する講演を各方面で行う
増田一真[マスダカズマ]
1934年生まれ、広島県出身、(株)増田建築構造事務所代表取締役、一級建築士。1958年東京工業大学建築学科卒業、(株)松村組入社、同61年東京大学生産技術研究所田中尚研究室、三井金属(株)入社、同64年(株)増田建築構造事務所設立。主要作品はICU理学本館、筑波第一小学校体育館、鎌倉雪の下教会、天龍原木センター、金沢城址公園、愛媛県大洲城、他一五〇〇棟。プレキャストコンクリート構造、木構造、耐力診断と補強法を研究。同時に、全国各地で伝統木構法の講演・セミナーを行い、普及・啓蒙活動に取り組んでいる
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