内容説明
地球環境という意識がまだなかった古代中国、そこには自然と人間の深い関わりを悟り、自然に対してどうふるまったらいいかを見定めようとする思想があった。コンクリートやアスファルトで世界を硬く塗り固め、やわらかな自然に触れる感性を失ってしまった現代文明を、時を超えて見つめなおす哲学エッセイ。
目次
1 風景のなかへ(空間の履歴;天地感応 ほか)
2 物を友として(月とすばるは;豚と魚と ほか)
3 変わるもの・和するもの(「川の水をとどめよ」;蠱 ほか)
4 時は流れゆく(古陶磁の丘陵;風の街 ほか)
著者等紹介
桑子敏雄[クワコトシオ]
1951年生まれ。東京工業大学大学院社会理工学研究科教授。研究テーマ:日本・東洋・西洋の思想をもとに、環境・生命・情報などの問題にかかわる価値の対立・紛争を分析し、合意形成プロセスの理論的基礎を明らかにするための研究を行っている。実践面では、川づくりや地域づくりでの住民と行政、住民どうし、行政機関どうしの間の話し合いの設計、運営、進行を行いながら、参加型合意形成プロセスを含むプロジェクト・マネジメントの研究を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅう
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空間の履歴とは空間の意味の蓄積であるという桑子氏の主張は、目の前に立ち現れる風景は人間と自然環境の度重なる相互作用がもたらした全ての出来事であるという哲学にもつながっている。つまりどんな出来事や歴史もその風景そのものではなく、すべてが合わさって初めて真に風景となるという視点である。これは、易の精神、熊沢蕃山の万物一体、物理学者ボーアの相補性といった考えを引用している点からも明確である。読み取りづらい環境や地域の本質を、確かな分析から抽出し、あるべき姿に戻そうという姿勢は現代人に必要な精神なのかもしれない。2023/04/09