内容説明
妖怪、UFO、心霊写真、美術、漫画、小説、映画…多様な書物、文化を縦横に読み解いた“恐怖のワンダーランド”
目次
世界妖怪図鑑
矢追純一のUFO史観
パラフィクションとしての『地獄変』
七〇年代カタストロフィ文化
心霊写真の父、中岡俊哉
恐怖の美術館
ポップ異端文書としての『百億』
『イグアナの娘』とマゾ的支配
寺山修司とエヴァンゲリオン
消えていく道化〔ほか〕
著者等紹介
樋口ヒロユキ[ヒグチヒロユキ]
1967年、福岡県生まれ。SUNABAギャラリー代表、文筆家。関西学院大学文学部美学科卒。PR会社勤務を経て2000年より執筆活動開始。2015年にSUNABAギャラリー開業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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くさてる
17
世界妖怪図鑑、矢追純一、海外の絵画やマンガ等々を切り口に「恐怖」を語った内容。入り口は、好き者ならばみな知っているような作品が多いけれど、そこから広がっていく著者の知見が刺激的で興味深かった。章の終わりに参考文献を丁寧に記載してくれているので、自分もそこからいろいろと考えを広げていけそう。2023/03/22
有理数
11
人間が何に恐怖してきたのか、そして何故、恐怖を求めるのかを、美術や文学、サブカルチャー、エポックメーキングな出来事や書籍を題材に迫っていく。『ノストラダムスの大予言』や、UFO研究家の矢追純一、心霊ブーム、萩尾望都、寺山修司と『新世紀エヴァンゲリオン』など……。本題の考察も面白いが、著者のオカルトに対する姿勢が好きで、たとえば『ノストラダムスの大予言』なども「世界滅亡などあり得ない」などと頭ごなしに猛烈に否定はせず、それが世に生まれた意味や著者の意図、広まった理由などを冷静に見つめている。面白かった。2024/05/29
qoop
7
恐怖という感情を、感覚としては明瞭に思えるのに対象化し辛いものと捉え、百を越える書籍(そして絵画)から表象を繙き、記号論を用いてその起源や本質を探ろうと試みた論考集。著者は恐怖を誘導して他者を操る感性の悪用について触れているが、批判する側が異なる立場に誘導されていることも多いだろう。諭す側が騙されていたという恐怖の一定型を思い浮かべた。2022/12/11
らむだ
3
小説・漫画・美術・演劇など、幅広い分野の“恐怖”表象から人がなぜ不快であるはずの恐怖を求めるのかを記号論と美学の論理を用いて探る。2023/08/25
伊野
3
「恐怖」という人間の機能の一つについて、記号論やフランスの近代思想、美学などを援用しながら学際的に考察する。前半は様々な文化的表象を例に恐怖について多角的視点を提供している。70年代に偏りが見られるが、本書で指摘される「恐怖の大きな要素のひとつは、因果律の乱れ」であることを鑑みると、科学的根拠が曖昧になり得たことが恐怖の存在をし易くする環境要因だったのではないかとも考えてしまう。シニフィアンの浮遊可能性。《9》寺山修司とエヴァンゲリオンが個人的には特に興味深かった。2023/04/19