強誘電体メモリーの新展開

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  • サイズ B5判/ページ数 134p/高さ 26cm
  • 商品コード 9784882318194
  • NDC分類 549
  • Cコード C3055

出版社内容情報

 【はじめに】

 強誘電体材料は,電界が0でも自発分極を示し,かつ自発分極の方向が電界により変化する材料である。 自発分極が現れる原因は,結晶を構成する正負のイオンの相対位置に2つの安定状態があり,電界を印加すると原子が一方の位置により多く変位し,電界を 0 にしても原子位置の不均衡が完全には元に戻らないためである。 強誘電体メモリー(FeRAM;ferroelectric randomaccess memory)は,この自発分極の方向をバイナリ情報の0と1とに対応させるため,電源を切っても記憶内容が消えない(不揮発性)。また,強誘電体膜の分極反転時間は十分に速い(電極面積が小さい場合は1ナノ秒以下)ために,DRAM 並みの動作速度が期待できる。
 これらの特徴に加えて,FeRAM には消費電力が各種のメモリーの中で最も少ないという特徴があるため,携帯情報通信機器の普及と共に近年その重要性が増しており,半導体メーカーを中心に活発な研究開発が行われている。その結果, 数 100k ビット以下の小規模なメモリーについては,非接触ICカード用やゲーム機器用としてすでに大量に生産され始めている。しかし,メモリーをさらに大容量化,低電圧化するためには,長期信頼性の問題など解決すべき課題も多い。
 現在実用化されているFeRAMでは,強誘電体薄膜をキャパシターに加工し,セル選択用のトランジスタと組み合わせて1ビットを表している。最も単純には,DRAM のキャパシターを常誘電体から強誘電体に置き換えたものと言え,動作特性に関しても,不揮発性であること,リフレッシュ動作(自己再書き込み動作)を必要としないことなどを除いてDRAMと類似している。一方で,強誘電体膜をMOS型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜として用いる方式や,上部電極を形成せずに走査型プローブにより読み書きを行う方式など,新しい方式の強誘電体メモリーも研究されている。これらの方式では,現行方式よりもさらに高速で,かつ高密度なメモリーの実現を目指しているが,その分だけ技術的な困難さも大きい。
 このような背景の下に,本書では強誘電体メモリーの基礎から最新のトピックスまでを取り上げ,読者に強誘電体メモリーの現状と将来動向とを把握して頂けるように配慮したつもりである。具体的には,まず第1章で全体の解説と強誘電体膜をトランジスタのゲート絶縁膜として用いる方式を紹介した後に,第2章から第6章で強誘電体材料ならびに薄膜の形成方法に関する最近の話題を提供する。また,後半はFeRAMの具体的な構成に関する章であり,基本回路と信頼性,集積化技術,高密度化に適したメモリー構成,不揮発性ロジック回路などの最新のデバイス技術,回路技術を紹介する。その後,FeRAM に関する韓国の現状と,強誘電体メモリーの将来展望について紹介し,最後に走査型プローブを用いた新しい方式に言及する。
 本書が,FeRAMの研究開発や生産に携わっている研究者,技術者の方々,ならびにこれからFeRAMの勉強を始めようとしている学生,技術者の方々の参考になれば幸いである。なお本書は,シーエムシー出版が発行している月刊「機能材料」誌の「次世代強誘電体メモリーの動向と展望」特集(2003 年 8 月号)に掲載された論文をもとに,5編の論文を追加して単行本化したものである。
   平成15年12月17日              石原 宏


 【執筆者一覧(執筆順)】

石原 宏   東京工業大学 フロンティア創造共同研究センター 教授
加藤 一実   (独)産業技術総合研究所 セラミックス研究部門 テーラードリキッドソース研究グループ 研究グループ長
舟窪 浩    東京工業大学大学院 総合理工学研究科 物質科学創造専攻 助教授
渡辺 隆之  東京工業大学大学院 総合理工学研究科 物質科学創造専攻
酒井 朋裕  東京工業大学大学院 総合理工学研究科 物質科学創造専攻
藤崎 芳久  (財)新機能素子研究開発協会/東京工業大学 フロンティア創造共同研究センター 共同研究員
木島 健    セイコーエプソン(株) テクノロジープラットフォーム研究所 第四研究グループ 室長
井手本 康  東京理科大学 理工学部 工業化学科 助教授
嶋田 恭博  松下電器産業(株) 半導体デバイス研究センター チームリーダー
有本 由弘  (株)富士通研究所 シリコンテクノロジ研究所 研究主幹
田村 哲朗  (財)新機能素子研究開発協会 研究開発部 研究開発課 主任研究員
高島大三郎 (株)東芝 セミコンダクター社 SoC 研究開発センター 主査
淵上 貴昭  (財)新機能素子研究開発協会 研究開発部 主任研究員/ローム(株) 研究開発本部 技術員
兪 炳坤    韓国電子通信研究院 (ETRI) 半導体源泉技術研究所 責任研究員
尹 聖民    韓国電子通信研究院 (ETRI) 半導体源泉技術研究所 先任研究員
桝井 昇一  (株)富士通研究所 シリコンテクノロジ研究所 主管研究員
長 康雄    東北大学 電気通信研究所 教授
平永 良臣  東北大学大学院 工学研究科 博士後期課程


 【構成および内容】


第1章 強誘電体メモリーの現状と次世代型への期待    石原 宏
 1. はじめに
 2. 現行型強誘電体メモリー
 3. FeRAM用強誘電体材料の現状
  3.1 Pb(Zr,Ti)O3(PZT)
  3.2 SrBi2Ta2O9(SBT)
  3.3 (Bi,La)4Ti3O12(BLT)
 4.次世代型FeRAMへの期待
 5.プロジェクトの研究概要
  5.1 強誘電体膜およびバッファー層の高品質化
  5.2 データ保持特性に優れた回路構成の検討
 6.おわりに

第2章 化学溶液堆積法による強誘電体薄膜の形成    加藤一実
 1.はじめに
 2.SrBi2Ta2O9(SBT)
 3.Bi4Ti3O12(BIT)
 4.CaBi4Ti4O15(CBTi144)
 5.おわりに

第3章 MOCVD法による強誘電体薄膜の形成        舟窪 浩,渡辺隆之,酒井朋裕
 1.はじめに
 2.薄膜の作製と結晶構造評価
 3.誘電特性
 4.リーク電流
 5.強誘電特性
 6.おわりに

第4章 減圧仮焼成法によるBi系強誘電体薄膜の形成   藤崎芳久
 1.はじめに
 2.実験
 3.結果および考察
 4.おわりに

第5章 PZT系薄膜新材料の特性                  木島 健
 1.はじめに
 2.従来PZTの抱える課題
 3.2段階成長Pt電極の開発
 4.PZT薄膜のリーク電流増大モデル
 5.リーク電流の低減
 6.新規PZTN薄膜の形成と信頼性評価
 7.PZTN薄膜分析結果
 8.第一原理計算からみたPZTN系
 9.結論
 10.おわりに

第6章 Si添加強誘電体材料の特性               井手本康
 1.はじめに
 2.(Bi,La)-Ti-Si-O系強誘電体酸化物
  2.1 試料の合成,特性,結晶構造の評価方法
  2.2 物性および強誘電体特性
  2.3 結晶構造
  2.4 Bi rich(Bi,La)4+x(Ti,Si)3-yO12の物性と強誘電体特性
 3.(Sr,Bi)-Ta-Si-O系強誘電体酸化物
 4. Bi-Ti-Si-O系強誘電体酸化物
 5.おわりに

第7章 強誘電体メモリーの基本動作と信頼性        嶋田恭博
 1.はじめに
 2.セル構成と動作原理
 3.信頼性上の課題
  3.1 ファティーグ
  3.2 不揮発性の評価方法と課題
   3.2.1 リテンション
   3.2.2 インプリント
 4.おわりに

第8章 強誘電体メモリーインテグレーション         有本由弘,田村哲朗
 1.はじめに
 2.信頼性の確保に向けて
 3.強誘電体キャパシター技術
  3.1 強誘電体薄膜材料
  3.2 電極材料
  3.3 強誘電体キャパシター
  3.4 配線形成技術
 4.メモリー回路技術
  4.1 2T2Cおよび1T1C型メモリーセル
  4.2 BGS方式によるデータ読み出し
  4.3 6T4C型メモリーセル
 5.回路シミュレーション技術
 6.今後の動向
 7.おわりに

第9章 連鎖型強誘電体メモリー(chain FeRAM)    高島大三郎
 1.はじめに
 2.従来型のFeRAM
 3.chain FeRAMの概要
  3.1 基礎構成
  3.2 基本動作
 4.高速化技術
 5.高密度化技術
  5.1 chain方式の優位性
  5.2 One-Pitch シフトセル
  5.3 低コスト階層ワード線方式
  5.4 小面積ダミーセル方式
  5.5 Chipサイズ比較
 6.低電圧化技術
 7.おわりに

第10章 強誘電体ロジック回路                淵上貴昭
 1.はじめに
 2.強誘電体ロジック回路
  2.1 誘電体不揮発性ロジック回路
   2.1.1 強誘電体不揮発性ラッチ
   2.1.2 強誘電体不揮発性フリップフロップ
   2.1.3 強誘電体不揮発性ラッチ・フリップフロップの応用
   2.1.4 不揮発性動的再構成可能ロジック
  2.2 機能パスゲート
 3.おわりに

第11章 韓国における強誘電体メモリーの現状      兪 炳坤, 尹 聖民
 1.はじめに
 2.大学の研究グループ
 3.国立研究所
 4.半導体メモリーの大手企業
 5.おわりに

第12章 強誘電体メモリーの応用              桝井昇一
 1.はじめに
 2.FeRAMメモリー素子構造と特性
 3.FeRAM搭載カスタムICの設計環境
 4.汎用メモリー
 5.スマートカード
 6.RFIDタグ
 7.FPGA/DPGA
 8.ASIC/カスタムLSI
 9.まとめと将来展望

第13章 非線形誘電率顕微鏡を用いた超高密度強誘電体記録  長 康雄,平永良臣
 1.はじめに
 2.SNDMドメインエンジニアリングシステム
 3.LiTaO3における微小分極反転ドメインの生成
 4.強誘電体高密度データストレージシステムの試作
 5.おわりに

内容説明

強誘電体メモリーの基礎から最新のトピックスまでを取り上げ、強誘電体メモリーの現状と将来動向を紹介。

目次

強誘電体メモリーの現状と次世代型への期待
化学溶液堆積法による強誘電体薄膜の形成
MOCVD法による強誘電体薄膜の形成
減圧仮焼成法によるBi系強誘電体薄膜の形成
PZT系薄膜新材料の特性
Si添加強誘電体材料の特性
強誘電体メモリーの基本動作と信頼性
強誘電体メモリーインテグレーション
連鎖型強誘電体メモリー(chain FeRAM)
強誘電体ロジック回路
韓国における強誘電体メモリーの現状
強誘電体メモリーの応用
非線形誘電率顕微鏡を用いた超高密度強誘電体記録

著者等紹介

石原宏[イシハラヒロシ]
東京工業大学フロンティア創造共同研究センター教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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