内容説明
詩人の眼で活写した魅力的なポルトガル観光案内!1920年代に“ヨーロッパ西端の小国”を世界に知らしめたいという“切なる想い”で書かれた未刊のガイドブック。翻訳出版にあたり当時の図版と現在の写真で立体編集。
目次
リスボン観光案内
リスボンの新聞
ケルースを通り、シントラへ
補・フェルナンド・ペソア博物館へ
ペソアのガイドブック―発見の経緯と背景
リスボン・1920年代の地図
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みねたか@
34
ポルトガルを代表する作家と言われるペソアによるリスボン観光案内。生前はほぼ無名だったというペソア。本書も他の原稿と同様死後にトランクから発見されたものという。彼がリスボンへの愛情を込めて仕立てたガイドブックはやさしさに満ちてリスボンの魅力を描き出す。石の芸術品ジェロニモス修道院、かつての漁師町の面影を今に伝えるアルファマ、幾度も言及される1755年の大震災の大惨禍を経ても今なお残る大航海時代の栄華。これを読めば誰もがリスボンを訪れたいと思わずにいられない。2023/10/24
かもめ通信
23
ペソア生誕100周年記念事業の一環で「発見」された1925年当時にペソア自身が英文で書いた原稿を元に出版されたリスボンのガイドブック。正直に言えばかなりマニアックな本ではある。だがハマる人はハマるであろう本でもある。私はといえば、読みながらすでに、この本を片手にリスボンの街を歩くことを夢見ていた。贅沢をいうならば、本は予習復習に使うとして、この本の朗読をイヤホンガイドにして、カメラ片手にリスボンの街をくまなく歩いてみたい。そんな夢を抱かせる1冊だった。2019/09/23
うえ
9
ペソアの未発表原稿の中から発見されたリスボン案内。多くの西欧人の知らない美しきリスボンの魅力を訴えようとするペソアの筆跡は、実に楽しげだ。施設の開館時間や料金まで詳しい実用的ガイドでありつつ所々でペソアなりの知見もみられる。カストロ大司教館は現在は「アルジュベと呼ばれる女囚刑務所になっている…道をはさんで反対側…こちらはリモエイロという男囚用の刑務所である」という。ペソア博物館で外国人に最も売れる書籍であり、その観光コースは大変緻密に組まれたものだとか。ポルトガルが誇る知識人のツアーガイドである。2020/09/04
micamidica
7
ペソアの中の「行動の人」がリスボンを案内してくれているという感じ。ペソアのリスボン、というよりポルトガルへの思いはしかと受けとめたけれど、ポルトガルの歴史や芸術に疎いので読み飛ばしてしまうところも…ごめんなさい。当時のポストカードらしき写真もちらほらあり、10年ほど前にみたリスボンと変わらないな、とも思う。サンタ・ジュスタのエレベーターはペソアの時代にもあったのかと驚いた。そして水道橋があんな近くにあるなんて知らなかった…リスボンに再訪する日を、よりいっそう夢見るようになってしまいました。2017/04/06
なおこっか
6
英国植民地でコスモポリタン的ナショナリズムを育んだペソアは、祖国ポルトガルPRの必要を感じ、その試みの一環としてリスボン旅案内を遺した。とてもとても律儀に建物と美術の歴史や製作者を調べて綴った文章。100年前ペソアが暮らしていた街から、たとえ建物が変わっても、道と川は変わらない。港から案内が始まるのが素敵。そしてロッシオ駅!コメルシオ広場!ジェロニモス修道院!再訪したくて堪らない各所に、確かにペソアは居たのだ。またしみじみ、リスボンという街は1755年の大地震が大きな転換点となっていると実感。2023/07/28