内容説明
エッセーの祖と言うべき哲学者の「倫理学論集」、豊富な知識とともに心に沁みいる随筆。ソクラテスの行動をさまざまな場面で抑止したとされるダイモニオンを話題に、くしゃみ説などを検討した『ソクラテスのダイモニオンについて』、厳しい境遇にある相手に語りかけた、心温まる書簡『追放について』等々、珠玉のエッセー9篇を収める。
目次
富への愛好について
気弱さについて
妬みと憎しみについて
妬まれずに自分をほめることについて
神罰が遅れて下されることについて
運命について
ソクラテスのダイモニオンについて
追放について
妻への慰めの手紙
著者等紹介
田中龍山[タナカリュウザン]
龍谷大学文学部講師。1964年京都市生まれ。1993年龍谷大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。2004年文学博士。2006年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう・しんご singoito2
9
今回は僕の好きな哲学的な論文が多くて愉しめました。「神罰が遅れて下されることについて」「ソクラテスのダイモニオンについて」では、冥府巡航譚が語られてそれも興味深い。また、「妻への慰めの手紙」は4人の男児のうち二人を失い、さらに2歳の末娘も失った妻への手紙で、これも理性によって感情を制御するよう奨める気丈な哲学徒としての顔と、そうは言いながら自分だって木石にあらず・・・と語るもう一つの顔が交錯する、一読に値する内容です。2024/04/25
roughfractus02
7
ヒッポクラテス医学を継ぐ著者は、神話や伝説を富や妬み同様、経験的現実的に捉える。ソクラテスの行動を抑止したというダイモンの声を、近くの他人のくしゃみと解釈したテンプルシオンに対し、著者はソクラテスがくしゃみを聴いたと言わず、声を聴いたと言い換えたなら彼の哲学にそぐわないとして、くしゃみを予兆と捉える古代社会の迷信に距離を置く。また、神罰が遅れて下される理由について、磔にされる杭(十字架)を罪人自身が作って処刑場まで引いていくから遅れるのだ、と皮肉る著者は、理由を神に求めず、現実に見出そうとする姿勢を貫く。2019/06/21
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