内容説明
金融業者にして稀代の詐欺師メルモットは、得体の知れない鉄道建設を名目として、ロンドンに重役会を設置。大衆の投機熱を煽って、株価を浮揚させ、濡れ手で粟の利益をつかむ。一人娘のマリーは父が決めた侯爵の長男ニダーデイル卿との結婚を拒否、文なしの准男爵とニューヨークへ駆け落ちを試みるが…。
著者等紹介
木下善貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)。北九州市立大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
45
舞台は19世紀中頃のイギリス。階級社会は成金の出現に揺さぶられ金を持っていることが力となり経済観念の変化や倫理欠如が生まれたこの時期にフランスからやって来たのが、金融界の魔術師オーガスタス・メルモット。彼は、素性の知れないよそ者で態度は粗野であるにもかかわらず、貴族からも保守・自由両党からも歓迎されるという存在で、貧乏貴族の若者たちはその一人娘マリーを虎視眈々と狙っている。メルモットは最初から詐欺師だと噂されそのうち破滅すると言われているのに彼からの恩恵を受けようとする者たちがあとを絶たない。⇒2025/10/02
takeakisky
0
なんとも怪しい新興成金メルモット氏。財産目当てにその娘との結婚を画策するサー・フィーリックス・カーベリー。いかにも胡散臭いアメリカの起業家フィスカー。成り行きで共同経営者にされてしまったポール・モンタギュー。カーベリーの母マチルダ、妹ヘッタ。本家のロジャーらが、手際よく紹介される。短いセンテンスを連ね、ストーリーがテンポよく進む。イギリスの沈みゆくアッパークラス。彼ほどの毒も、凝った言い回しも無いが、雰囲気はウォーを読むようだ。お分かりでしょ?と言わんばかりのしれっとした皮肉がそう思わせるのか。面白い。2024/07/17