内容説明
鉄道敷設や港湾事業で財をなしたサー・ロジャーの巨万の富はいったい誰に遺されるのか?フランクはお金と結婚して旧家を再興するように家族から迫られ、女相続人にアタックするが、心は初恋の人、メアリー・ソーンに。若きフランク・グレシャムのラブ・ロマンス。トロロープのベストセラー小説本邦初訳。
著者等紹介
木下善貞[キノシタヨシサダ]
1949年生まれ。1973年、九州大学文学部修士課程修了。1999年、博士(文学)(九州大学)。現在、北九州市立大学外国語学部教授。日本英文学会監事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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umeko
9
面白かったです。なんだこりゃと思うほどのぶ厚さですが、ラブストーリーなので案外さっくりと読了。ソーン医師の姪の恋物語ですが、流石タイトルになるだけあって美味しいところは押さえています。物語の時代や舞台となった町、登場人物たちなど、当時のイギリス社会の一面がとても魅力的でした。2012/09/18
きりぱい
5
あとがきに47作品中これが一番読まれたとあるけれど、ほんとに?と思うくらい長い。六連作の三巻目にしては全く独立した作品としても読める。わけあってソーン医師に引き取られたメアリーと、土地の郷士グレシャム家の跡取りフランクとの間に芽生えた愛。上流階級の面目か金か、どちらに固執してもロマンスは茨の道。卑しい者とはまじわりたくないけれど、お金は別と、他人を傷つけることに無神経な面々がいやらしさむき出しで面白い。思ったより想定通りな結末までが遠い道のりなのだけれど、退屈はしない。ミス・ダンスタブルがいい。2012/07/11
ロピケ
4
この頃の小説って面白い。いきなり作者が顔を出しては、この主人公がお気に召さなければ、もう一人の方にしてくれて結構とか、これからこのスタイルでこの章を書き上げるつもりだとか、この描写は読者も退屈だろうから省略するとか言いたい放題。「筆頭平民」なんて初めて聞いたけれど、自分達の階級を死守しようとする、時には(今から見ると)浅ましい努力をし、それに振り回される人々。確かにスキャッチャード父子を見れば、下層階級のおぞましさを痛感させられるけれど、「お金と結婚する」なんて身も蓋もないことを言い含める家族って…。2012/09/14
Hotspur
3
「バーチェスター年代記」三作目(1858)。今回は前作と違って重要なキャラの再登場はない。今回は身分意識、婚姻、そして遺産相続など、いかにも英国人好みのテーマが展開される。本作はトロロープ作品で最も売れたらしい。本作は金銭問題とそれに絡む法的問題の占める割合が大きいためか、バルザックの作品を想起させる。W・H・オーデンは「トロロープは金銭問題を一番よく理解している。彼に比べたらバルザックですらロマンティックだ」と述べたが、ちょっとそれは言いすぎだろうと思う。いずれにせよ、実に幸福な読書体験ではあった。2022/02/06
NZR
1
はじめの数章はとっつきにくかったが、途中で悪構成を読者に詫びる筆者の文が現れ、そこからは途端に読み易くなった。検査入院中に読破しようと分厚い本を選んだが、展開も分かり易くて退院数日前に読み終えてしまった。訳文は個人的に好み。2014/09/16