内容説明
19世紀イギリスが誇る女流作家ジェーン・オースティン待望の新訳。南イングランドを舞台に、普通の女の子がヒロインになるまで―風刺性、喜劇性をあわせもつ、オースティンならではの恋愛世界が広がる。キャサリン・モーランドという十七歳の若い女性を主人公に、前半はファッショナブルな温泉保養地バースを舞台に、後半はグロースターシャーの裕福な地主の家ノーサンガー・アベイに場所を移して、繰り広げられる。バースでは裕福な地主アレン夫妻や新興ブルジョアのソープ一家を中心に、社交場や遊歩道などを舞台に都市小説風の展開を見せ、ノーサンガーでは怪奇小説的要素を加えて、地方地主の古い屋敷を舞台に裕福な地主の生活ぶりを浮かびあがらせるしかけである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
335
2部構成をとる。前半は、当時(19世紀初頭)裕福な階級の人々の間で人気を博していた温泉保養地のバースでの出会いが語られる。華やかで開放的な気分が横溢し、恋が生れる。後半はグロースターシャーの元修道院、ノーサンガー・アベイでその後の顛末が語られていくが、こちらは一転して幾分かゴシック小説風の趣きを湛えた章段である。ヘンリーの父、ティルニー将軍の突然の翻意など物語の展開としては無理が感じられることも否めない。また、全能の作者が語るという方法も如何にも古めかしい。当時の読者たちには、この方が良かったのだろうか。2022/07/23
まふ
123
二部構成の小説的には面白い展開であった。前半は温泉地バースでの楽しい社交生活、後半は元僧院の邸宅におけるティルニー家とのゴシック小説的な雰囲気での生活。恐怖小説を読みすぎたキャサリンの期待した恐ろしい何ものかは起こらなかったが、結果的に家主であるティルニー将軍の頑なな一方的思い込みこそが怖いものであり、これに振り回されたものの、その障害を乗り越えてヘンリーと結ばれるといういつものハピーエンドになる。「カネが結婚のすべての基準」というジェーン・オースティンの(普遍的な)世界は健在であった。G1000。2023/09/02
星落秋風五丈原
23
【ガーディアン必読1000冊】ジェーン・オースティン作品のヒロインといえば、ちょっと癖はあるものの善良さを持ったヒロインが、財産がないがために馬鹿にされ、しかし金持ちの男性に見初められてハッピーエンドを迎えると決まっている。それなのに、本作の主人公キャサリンは、最初から作者本人にディスられている。ヒロインになったところでやっと出会いが訪れる。ヒーロー、ヒロインが毅然とした態度を取らないうちに何となく大団円に向かうので、他作品に比べるとあまり人気はない。2019/01/17
かもめ通信
20
『やりなおし世界文学』からの派生で○○年ぶりに再読。正直なところ読む前は、オースティンをやり直すなら他にもっと面白い作品があるのに、と思っていたのだが、読んでみたらこれがなかなか面白かった。オースティン、本当にのりのりで書いたんだな。きっと。2022/11/07
ごへいもち
14
ゴシック小説の読み過ぎであらぬ想像をするヒロイン・その彼女をからかうヒーロー。こんなおかしな小説だとは( ^)o(^ )2010/08/08