内容説明
哲学者クロサキ、入魂の電子メディア論。本書は、めまぐるしい時代のテンポの中で、我々にとってコンピュータとはいったい何なのかを思索する試みである。
目次
第1章 電子テキスト時代―電子メディアと人間主体
第2章 「書くこと」の歴史―〈著者〉の系譜学
第3章 記号と直観―フーコー、パース、カント
第4章 記号論の解体と超越論的統覚―ネットワーク時代の記号論
第5章 チューリング・テストと霊魂論(上)―科学時代における「心」
第6章 チューリング・テストと霊魂論(下)―学問としての形而上学はいかにして可能か
第7章 決定論的カオス―「計測しえないもの」という影
第8章 必然と偶然の弁証法―決定論的カオスの観点から
第9章 ヴァーチュアル・リアリティと現代―自然性と人工性の齟齬
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鴨長石
2
カオスや複雑系に関するものが読みたくて手に取った。ところが前半は電子書籍に関する哲学的考察であり、これが思わぬ面白さで得した気分だ。書籍において「著者」が絶対的存在となったのは活版印刷が確立してからというのは言われてみればその通りで、電子書籍はむしろ手書きで書き写していたころの書籍と類似性がある。ところが新技術はしばしば旧来のスタイルを強化する方向に最初のうちは向かうというパターンに従い、今のところ紙の書籍と大枠は変化ないように思う。今後大きな変化が起こるなら、本書は卓見を示していたことになるが、どうか。2021/06/19