内容説明
残塁の数を数えて甲子園きみは十二でぼくは九つ 打ててれば勝ってる試合が十はあり打ってないから十は負けてる 阪神のホームは今日も遠すぎてどこにも帰れぬ私みたいで 初めての感情だなこれオレンジのチームから早く疾病よ去れ 一試合ごとに詠み続けた野球への愛、全三一三首。
目次
3月25日×
3月26日×
3月27日×
3月29日×
3月30日×
3月31日×
4月1日×
4月2日×
4月3日×
4月5日○
4月6日×
著者等紹介
池松舞[イケマツマイ]
東京生まれ。出版社勤務を経て文筆業。2022年4月8日、作歌を始める。本書が初の著書である。文学と野球と将棋が好き(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
78
この歌集の素晴らしさは、言葉を作っていないからなんだと思います。最近ではあまり見ない光景になってしまったけれど、居酒屋のテレビはナイター中継を映している。客はほとんどがひとりで飲んでいる。チャンスの場面やチャンスがつぶれたときに誰ともなく呟く言葉。それは心の声なのだ。誰のためでもない美しい心の声なのだ。この歌集にはそんな美しさに満ちています。阪神ファンではないけれど、野球を本当に愛しているから、とっても楽しい。2023/07/18
まっと
32
「いつまでたっても阪神が勝たないから、短歌を作ることにしました」。確かに2022年、阪神のペナントレースはそんな感じだった。1年間、毎試合のように1句、そしてまた1句、一つ一つに阪神愛が感じられ、喜怒哀楽、悲喜こもごもがまさに前面に出たような作も多い。「早すぎる夏に蝉が追いついた今日の阪神はまだ土の中」(7月7日)。「私がピッチャーだったら旅に出る『みんなが打つまで帰りません」(8月11日)。2022年終盤に光が見え、翌年見事な姿を見せてくれるのだが、さて、この歌集(川柳?)2023年版はあるのだろうか。2024/01/23
ちはや@灯れ松明の火
31
おーん。本当のファンなら落ち目の時にこそ応援しろと誰かが言った。予祝して九つ負けて火が着いた虎の女は短歌を作る。残塁の数を数えて、本塁の距離を嘆いて増える黒星。大阪の電話番号と勝率は同じ悪夢の数字〇六七。おんおーん。青柳に後光が射して、大山も春だけじゃなくて四位浮上。CSに滑り込むべく三つ巴、鯉と兎の自滅でゲット。ハマスタの星の輝き奪い取れ、いつかの泥試合のリベンジ。ひとつ勝つだけで奇跡のようだった虎が王者の燕に挑む。おんおんおーん。ファイナルでセ界にうちのめされたって今年の涙はアレへの予祝。そらそうよ。2023/11/16
糸巻
26
阪神ファンの著者が2022年シーズンにおいて詠んだ歌集。明日いよいよ開幕なので、阪神ファンでなくても野球に関するものに触れたくなるのです。開幕してからなかなか勝てずヤキモキする思いが込められていて、他人事ではないなと感じながら一首一首を面白く読んだ。印象に残ったのは【一点を取られただけのピッチャーが勝てないセ界を誰か救って】【ピッチャーが頑張ってるのに打線がね、解説者のその言葉がすべて】ジワジワくるー。今年はどこが優勝するかな。2024/03/28
いちろく
26
紹介していただいた本。阪神が勝たないから、という理由で短歌を作りSNSに投稿した詠み人のタイガース2022年ペナントレースの記録。ホークスが好きでパ・リーグファンの私ではあるが、「セは?」と聞かれたら阪神。だからこそ、虎派の著者の気持ちも痛いほどわかる。それぐらい2022年の阪神は開幕から弱かった。何かで発散したい気持ちもわかる。そこから起こった奇跡の形が、いま手元にあるこの本ではないか? どん底からAクラスまで勝ち上がった一つの記録とも受け取れた。今年好調な阪神、著者は今どんな歌を詠んでいるのだろう?2023/05/21