内容説明
“脱北民の哀歓を、理解と和合の願いを、そして希望を、私の小説に込めた。”生き直す人々。脱北文学の新たな地平を開く9つのストーリー。
著者等紹介
キムユギョン[キムユギョン]
金瑜瓊。北朝鮮の「朝鮮作家同盟」所属の作家として活動したのち、2000年代に韓国に入国。祖国に残る家族に累が及ぶことを恐れ、ペンネームで作家活動を行う
松田由紀[マツダユキ]
東京都出身。韓国語講師(北海道大学など)、通訳者、翻訳者。翻訳は特許・司法関係を中心にさまざまなジャンルでおこなっている。早稲田大学教育学部教育心理学専修卒業。新聞社勤務ののち、韓国延世大学新聞放送学科大学院碩士(修士)課程修了(言論学碩士)
芳賀恵[ハガメグミ]
札幌市出身。韓国語講師(北星学園大学など)、翻訳者。北海道大学文学部卒業後、道内放送局勤務を経て渡韓。韓国で経済ニュースの翻訳・配信会社に勤務しながらKBSワールドラジオ日本語放送の番組に出演、ドラマの字幕翻訳なども手掛ける。帰国後、北大大学院で韓国映画を研究、修士号(学術修士)を取得(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あじ
24
脱北したらなにもかも上手くいくとは限らない。神経の先端まで絶望することや、ただただ疲弊に暮れることもあるだろう。それぞれに降りかかる9つの短編。手元を照らす仄かなラストがあなたにどう響くのかは、未知数。覆面脱北作家の作品集。2025/05/05
キクチカ いいわけなんぞ、ござんせん
22
脱北して韓国にいる作家が書いた短編集。食糧難の北朝鮮の暮らし。脱北して中国人に売られる女性たち。韓国で暮らし、ズタズタになったプライドを静かに暮らす事、あるいはがむしゃらに働く事で取り戻そうとする人々。浮浪児になっていた息子を脱北して取り戻すが、息子は字も読めないまま母子の溝は深まったままの悲劇。どれもリアルで辛い話だった。分断は国民の望んだことではなく、関わった他国は知らん顔である。悲劇としか言いようがない。2025/03/07
あおでん@やさどく管理人
19
神保町の韓国書籍専門店・チェッコリのXポストより。著者は脱北作家(ペンネームで活動)で、北朝鮮でも作家として活動した経験があるとのこと。9編の短編からなり、いずれも脱北者が登場するか、北朝鮮が舞台となっている。とはいえ、作品中では脱北者や北朝鮮の人々だけでなく、彼らと関わる中国や韓国の人々が苦しみを抱えていることもある。そんな意味でも、北朝鮮の人々も、脱北者も、第一に一人の人間だ。過度に憐れんで接することは、彼らとの連帯を妨げることにもなりかねない。そんなメッセージを感じる物語だった。おすすめ。2025/02/11
チェアー
7
脱北して終わり、とはならない。そこから新たな人生(に見えるもの)が始まる。これまでの人生を断ち切るわけではない。いや、濃厚に過去を引き継ぐ。脱北者の多くは、ごくたまにだが「北に帰りたい」と思うのだそうだ。ちがう環境に身を置くディアスポラとして、自分の居場所を一生探し続ける。2025/03/26
nekomurice
7
ドキュメンタリー「ビヨンド・ユートピア」を思い出す。命からがら脱北して、辿り着いた先でも更に過酷な試練が待ち受けるなんて…。最後のお話「赤い烙印」が1番印象的でやるせない気持ちで本を閉じた。2025/03/21
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