内容説明
治承・寿永内乱や蒙古合戦をもとに、参陣作法や恩賞給付、所額に応じた軍役負担、軍事行動を支える非戦闘員など、知っているようで知らない合戦のリアルに迫る!
目次
第1部 鎌倉時代の合戦の実態(戦争の実態から探る鎌倉武士;兵粮米はいかに調達されたか;軍事情報はいかに伝達されたか)
第2部 軍勢催促から恩賞受給までの流れ(軍勢催促と参陣;軍忠申請と軍功認定;恩賞制度の整備と給付の実態)
著者等紹介
松本一夫[マツモトカズオ]
1959年、栃木県宇都宮市生まれ。1982年、慶應義塾大学文学部卒業。2001年、博士(史学)。前栃木県立上三川高等学校長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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六点
88
前著『中世武士の勤務評定』から鎌倉時代に対象を絞り込んだ一冊。資料の残存性から『吾妻鏡』と『蒙古襲来絵詞』からの引用が多く、服部秀雄先生の『蒙古襲来』を批判的に検討している。内容を忘れた六点にとっては極めて理解を得た部分であった。「一所懸命」とはただ命を的に土地を獲得した事を指すのではなく、軍功の申請やらトラブルの解決、空いた所領があるかなど多くの問題を解決した上でのものであったから、そりゃあ命を懸けたくもなります。なとど思った事であることだよ。2024/08/01
MUNEKAZ
20
タイトル通りの内容の一冊。ただ史料的な限界があるのか、どうしても『蒙古襲来絵詞』からの引用が多くなる印象。教科書だと元寇後の恩賞配分に苦労したという記述が多く見られるが、なるほど確かにめっちゃ苦労してますねというところ。20年以上たって恩賞が決まるなど、当時の武士たちが不満を持ったのも頷ける。また源平合戦のころはしっかり定まっていなかった軍功認定の方式が、元寇を契機に室町期や戦国時代のような文書による厳格なシステムへと変化していく流れも興味深かった。2022/07/10
Toska
12
華やかなイメージの強い鎌倉武士の合戦の舞台裏を深堀り。強固な防御線を構築して待ち受ける奥州藤原氏に対し、頼朝の軍勢が最初から工兵を準備していた話などは、意外なほど近代的なセンスをうかがわせる。一方、手柄の立てやすい戦場を求めて勝手に持ち場から動いたり、守護と折り合いの悪い御家人がその指揮下に入ることを嫌がったりする一面も。我々にとっての「軍事的合理性」が当時の武士たちにどれだけ通用するのか、よく考える必要がありそうだ。2024/11/16
フランソワーズ
10
鎌倉・室町時代初期は人物や政、合戦そのものばかりに目が行きがち。だけど、副題にある「軍勢催促、戦闘作法、情報伝達、軍功認定」に関しては、”歴史ロマン”の淡いヴェールに包まれる心地よさに浸っていて、積極的に知ろうとしませんでした。でもこうして実態が明らかにされると、とても興味深いものがあります。例えば、宝治合戦における筑後知定の恩賞嘆願とか、承久の乱の後に幕府が獲得した所領とその宛行など、歴史を額面通りに受け取るだけでは分からない”現実”が見えました。→2022/10/25
さとまる
10
前作の『中世武士の勤務評定』が南北朝時代の軍事行動のと恩給システムについてなら、こちらは時代を遡って鎌倉時代のそれを解きあかす。が、どうしても史料の少なさから前作ほどのボリュームは出せず『蒙古襲来絵詞』に依ったものが多くなってしまう。それでも情報はたっぷり。特に疑問だった情報伝達に関する部分が説明されているのには満足。2022/07/02