内容説明
記憶を歌にする。ますます研ぎ澄まされていく渡辺松男の歌は限りなく清明で美しく生命溢れる。
目次
鏡
じかん
駅
救急車
悪心
運動
老い
こども
からだ
体温と撮る
こゑ
歯
はだか
こころ
ゑんぱう
ゆめ
息と風
雲と雨と雪
炎暑
ひかり
空
さかな
海
山
猿と熊と牛
滝と鳥
清流
鍾乳洞
バラギ湖
下山
色彩学
日溜まり
紙と火
夕焼け
クルマ
牧野植物園
竹
さくら
あぢさゐ
ひまはり
くだものと木の実と野菜
四本六本八本
〓
すずめ
ふつう
いせさき
無効分散
密集
入口出口
洋種山牛蒡
アンジャベル
麁食
さかひのシアン
全霊
著者等紹介
渡辺松男[ワタナベマツオ]
1955年5月、群馬県伊勢崎市生まれ。前橋高校を経て東京大学文学部卒。現代歌人協会賞、ながらみ現代短歌賞、寺山修司短歌賞、迢空賞を受賞。「歌林の会」会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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toki12
1
90点 荒海を荒海として2023/11/15
みのり
0
自分が渡辺松男を愛読する理由は、その自然に対する眼差しというよりも、自然を通じて不意に自分自身の存在を相対化して遠くにやってくれるところにあるのですが、本書はそれが際立ってました。他方、作者の置かれている状況(ALSを患っている)を過度に読み込ませようとするメタファーなどがあり、安易に読んでいいのか、緊張感もあった。何度も読みながら、納得できる読みを見つけてみたい。2023/09/30
糸くず
0
自然の有り様と人間の溢れ出る感情が溶け合いながらも、短歌を詠む歌人の心にはちゃんと芯がある。妻を亡くした悲しみや独り身の孤独も歌われているが、全体としては飄々としていて余裕すら感じられる。気持ちのいい歌集だ。◆春は野に金色のゆびやはらかくトロンボーン吹くあの子がツクシ◆このさみしすぐる杯には地平まで秋といふ名の空が満杯◆みづうみに憩ふボートは毟られし鳥の羽浮くごとくにあまた◆山火事のやうな躍動にて湧ける泉みてゐてすごく逢ひたき◆夕焼けを生める地球のふかき嘆き渡りの蝶もまぬがれがたき2023/08/09