内容説明
昏睡の世界はピンク色だった。大学4年生の時、くも膜下出血で意識不明になった著者が意識を取り戻したのち、語ったこと。意識のない世界は、真っ暗闇ではなく、春のような、穏やかで、暖かい世界だった。くも膜下出血で倒れ、意識のない世界では、いつもどおりの時間が流れていた。現実世界では、緊急手術が行われ、死んでしまうかもしれない、植物人間になるかもしれないと、両親は不安な日々を過ごす。昏睡から目覚め、社会生活に復帰したいま、同じように目を覚まさない家族や恋人、友人を持つ人々に、その世界は真っ暗闇ではなく、現実世界と同じような日々の暮らしが続いているのかもしれないと、伝えたい…。昏睡状態での意識のない日々を中心に、その後の出来事を書き下ろした一作。
目次
1章 昏睡DAYS
2章 RE BIRTH
3章 NEW DAYS
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みの
7
くも膜下出血で倒れた若い女性のお話。昏睡状態で、傍目にはコンコンと眠り続けているように見えるけど、彼女の中では日常の日々が続いていたという。自分の身内で同じく、くも膜下で倒れた人がいるけど、同じような感じだったのだろうか。 ご両親を中心とする回想と、昏睡状態で彼女が暮らしていた日常が日にちごろにリンクして書かれていて、痛々しくもあり、その世界のギャップに驚かされる。彼女のサイトを拝見しましたが、現在は講演など不定期で行っているそうです。2012/02/22
エディン
5
「困った人」を読んだ後、司書の先生に薦めていただいた本。くも膜下で入院されている方をお見舞いに行くことがある。行くたびに、どのように声をかけていいものかと、悩んでしまう。「意識のない世界は、決して暗く、辛い世界ではないことを、思い出してください。」という有田さんの言葉がヒントになる。ただあまりにも不思議な体験なので、分からない部分も多い。有田さんは福岡在住なので、直接お話を聞く機会があればなあと思う。2013/02/07
みきすけぶんぶん
4
昏睡中も、いつもと同じような日々をご機嫌よく過ごしていた…そのつもりだった。ということにまずすごく興味を持った。この昏睡中の不思議。こうやって脳は辻褄を合わせるのかもしれないが、でもそれだけでは説明できない何かを感じた。 著者の生きるちからや周りのささえる気持ちはほんとに尊い。そして、お母様の手記には心を打たれた。生きていてほしい、でも、後遺症が残るこれからの生活を考えると…。そういう人を自然に支えられる社会でなくては。そう思った。2014/09/14
ゆうゆう
4
父の病気を機にくも膜下出血に関する本を探していて出合った。両親の落胆ぶりと本人の積極性が対極で描かれているのが印象的。障害が残る本人もつらいが、介護する側はどのように接したらいいのか?どのように支えていけばよいのか?生きる目標を見つけていけばいいのか?今もそのあたりは迷っているけれど、病気をした当人の苦しさ、悩みは前よりも理解できるようになった。ひとつずつを一緒に乗り越えていきたい。2011/12/26
ココアにんにく
3
意識不明で反応がなくてもちゃんと伝わっているのですね。私は見舞う側で伝わっていると思っていました。ICUに何度も入って手を握って話かけて…本書をよんで確信しました。有田さんありがとうございます。上下二段に分かれた構成がすごくリアル。後半になるごとに上段の文字が増えていくうれしさ。有田さんの前向き姿勢や感謝の気持ちが家族や医療関係者も巻きこんでいくように思えました。PTさんが積極的にかかわりたくなる気持ちわかります。「捨てる」と「成し遂げる」との関係って著者の生き方そのものですね。『晴れのち』も読みます!2016/08/19