出版社内容情報
プラトンの中期対話篇で主著である『国家』については,アリストテレスによる批判以来,今日に至るまで賛否両論さまざまな見解が示されてきた。20世紀には政治の書としても読まれ,「自由主義の理念に対する最も苛烈で深刻な攻撃」であり,民主制を批判し全体主義的だとして,プラトン哲学と『国家』の反自由主義的態度が非難された。
正義とは社会秩序と各人の諸権利を守り,自由は個人の勝手な振る舞いを許容する。したがって一般的に正義と自由は相反するものである。
著者はプラトンの正義が魂の内なる秩序であることに注目し,また自由を「抑制された自由」として捉えることにより,正義と自由が必ずしも相容れないものではないことを明らかにする。さらにプラトンが初期対話篇では自由に対し否定的であったが,中期の『国家』を転換点として後期対話篇の『法律』では肯定的になっていった思想的変遷を示す。
新たな視角から『国家』に光を当て独自の見方を示すとともに,現代の自由主義理解のみを唯一,真正とする通念に問題を提起した意欲的な作品である。
第?章 問題の所在
『国家』をどう読むか
『国家』以外の対話篇における自由
『国家』第一巻
第?章 方 法
国家と魂の類比
正義に関わる二つの問い
比喩
第?章 国 家
国家と経済
理想国の自由
同意
権利
第?章 魂
第二巻冒頭――探究の方向を定めるもの
魂の三部分
様々なタイプ
僭主独裁制的人間
正しい人とは誰か
洞窟からの解放
第?章 自 己
洞窟への帰還
詩人の追放論
自己
新たに始める自由
付論1 プラトンの体育論
付論2 プラトン『国家』における「女性の劇」の射程
高橋雅人[タカハシマサト]
著・文・その他
内容説明
著者はプラトンの正義が魂の内なる秩序であることに注目し、また自由を「抑制された自由」として捉えることにより、正義と自由が必ずしも相容れないものではないことを明らかにする。さらにプラトンが初期対話篇では自由に対し否定的であったが、中期の『国家』を転換点として後期対話篇の『法律』では肯定的になっていった思想的変遷を示す。新たな視覚から『国家』に光を当て独自の見方を示すとともに、現代の自由主義理解のみを唯一、真正とする通念に問題を提起した意欲的な作品である。
目次
第1章 問題の所在
第2章 方法
第3章 国家
第4章 魂
第5章 自己
付論1 プラトンの体育論
付論2 プラトン『国家』における「女性の劇」の射程
著者等紹介
高橋雅人[タカハシマサヒト]
1966年生まれ。1988年東京大学文学部第一類倫理学専修課程卒業、1993年東京大学大学院人文科学研究科倫理学専攻博士課程単位取得修了、神戸女学院大学文学部専任講師をへて現在神戸女学院大学文学部准教授。博士(文学)。専門は、倫理学、古代ギリシア哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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