内容説明
『神学大全』に対しもう一つのスンマと言われる中期の代表作『対異教徒大全』の第2巻56章から90章のラテン語対訳である。本書で扱われているのは「人間存在についての基礎論」ともいうべきもので、知性的被造物としての非質料的で非物体的であるはずの人間の魂が「どのような仕方で身体と合一するのか」が主題となり、心身合一である人間が問われるとともに身体と合一しない純粋な知性的存在者(天使)に固有なあり方が論じられる。トマスが人間の身体より「知性的側面」に重点を置いているのは、イスラームの思想家アヴィセンナやアヴェロエスの「知性論」との知的対決を目指していたものと思われる。本書はこれらの思想史的背景を踏まえて、トマスの人間への眼差しを明らかにする。適切な註解と平易な訳文を心がけると共に本格的な解説を付す。トマス人間論への格好の導きとなろう。
目次
知性的実体はどのような仕方で身体と合一し得るのか
知性的実体の身体への合一についてのプラトンの立場
人間において栄養摂取的魂、感覚的魂、知性的魂という3つの魂が存在するのではないこと
人間の可能知性は離存実体ではないこと
人間がその種を得るのは受動知性ではなく可能知性を通じてであること
前述の立場はアリストテレスの主張に反していること
可能知性に関するアレクサンドロスの意見への反論
ガレノスが主張したのとはちがって、魂は体質ではないこと
魂は調和ではないこと
魂は身体ではないこと〔ほか〕
著者等紹介
川添信介[カワゾエシンスケ]
1955年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。京都大学博士(文学)。大阪市立大学助教授をへて、現在京都大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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