感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
わいほす(noririn_papa)
4
歌集というより詩集のよう。様式美やリズムより、散文的な言葉の強さ、意外性が光る。「あなたは僕の幽霊に、僕はあなたの幽霊に、雪の手紙を書いていたんだ」「タクシーを呼ぶね 二人で真夜中の底へ沈んでゆくための舟」。また、祖母の言葉で戦争体験を語る連作「汽車が堕ちるみてゃぁな音して しばらくの記憶は誰かに抜かれたで、無い」などや、シリアの活動家の言葉を歌にした「私なら奴らを屠る。君たちはなぜヒロシマを許せましたか」などもあるが、個人的には短歌に昇華させて語るべきものだろうか、とも思う。装塡はさすが名久井直子さん。2026/04/24
kumoi
3
名古屋出身の歌人の第3歌集。尾張徳川家十二代藩主である徳川斉荘(なりたか)の知多巡覧歌紀行文をなぞって、歌人が知多を訪れたときの旅情を綴った『知多廻行録』が印象的だった。当時の六日間の旅程を今ではクルマに乗って一日で回れてしまうことからして、趣きは失われている。都会の喧騒に埋もれてしまっている自然の息吹や歴史の痕跡を発見できるように学びたいと思ったし、そうすることで日々の生活に安らぎを与えてやりたい。2026/08/08
トマス
2
祖母への取材を基に戦争体験を方言で詠む「つぐ」や藩主の足跡を辿る「知多廻行録」など、角度を変えたアプローチが面白い。中東短歌の地平を越えて様々な視点から詠まれる歌には、平和を当然視しない鋭さと祈りが静かに光る。定型を破っても崩れない力強さがあって好き。2025/05/23
紫花
1
読書会で勧めて頂いていた短歌集。装幀が名久井直子さんじゃないですか!道理で素敵な訳だ。 詩歌はよくわからないとなんとなく敬遠していたが、文章で情景が見えるタイプなので現代詩歌は相性が良いのかも。しかも、千種さんはどんな場面で詠んだのか説明があるのでより起こしやすい。 名古屋の祖母に取材した一連の短歌は、 幼い頃から慣れ親しんだ名古屋弁にぐっと来た。 ―渋谷の底の信号待ちのこのあたり太古は海の底だったのに (10頁) 句の後半になんか既視感があるんだよなぁ…ありがちな表現だからかな。2026/05/26
km
1
⚫︎動くのが蝶、動かないのが花ならばその絵はまったく花にあふれる⚫︎あなたは僕の幽霊に、僕はあなたの幽霊に、雪の手紙を書いていたんだ⚫︎木の雨戸ごっとずらせばひとすじの月の光が右肩にある⚫︎ならば詩は料理に近く、手の届くすべての言葉を食材とする⚫︎私なら奴らを屠る。君たちはなぜヒロシマを許せましたか⚫︎仙人掌の垣根は岩の家々を護るやさしい棘をまとって2025/10/17




