内容説明
資本主義は、20世紀において、1929年の世界恐慌、1971年のドルショックなど、いくつもの危機に見舞われながらも、ヴァージョンアップし、さらなる発展を遂げてきた。そして21世紀、資本主義は新たに危機に直面している。資本の動きをめぐる矛盾を17種に整理して、原理的・歴史的に分析。それをもって21世紀資本主義の未来について考察する。
目次
“資本”がもたらす矛盾について
第1部 資本の基本的な矛盾(使用価値と交換価値;労働の価値と貨幣;私的所有と国家 ほか)
第2部 運動する資本の矛盾(技術、労働、人間の使い捨て;分業における矛盾;独占と競争 ほか)
第3部 資本にとって危険な矛盾(無限の複利的成長;資本と自然;人間性の疎外と反抗)
資本主義以後の社会―勝ち取られるべき未来の展望
著者等紹介
ハーヴェイ,デヴィッド[ハーヴェイ,デヴィッド] [Harvey,David]
1935年、イギリス生まれ。ケンブリッジ大学より博士号取得。ジョンズ・ホプキンス大学教授、オックスフォード大学教授を経て、現在、ニューヨーク市立大学教授(Distinguished Professor)。専攻:経済地理学。現在、ギリシア、スペインから、中南米諸国、中東、中国や韓国まで、文字通り世界を飛び回り、研究・講演活動などを行なっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ukmsblue
7
これまでのハーヴェイの集大成の感がある著書だった。資本が内在的にはらむ矛盾について、資本論の流れに従いつつ、具体的例を挙げながら語られていく。この流れが続けば早晩、破滅が待っている、との考え方が根底にあるが、「もう一つの道」は明確には示されない。ハーヴェイほどの碩学といえども資本の持つ矛盾の解決方法は難しいということだろう。2017/12/22
roughfractus02
4
資本の蓄積が進めば有効重要が不足して剰余価値の実現は難しくなるが、有効需要を維持すれば剰余価値の創出も難しくなる。が、資本に孕むこの矛盾を抱えつつ資本主義システムは統合されていると著者はいう。本書はこの矛盾を17のケースとして提示する。第四次産業(金融、保険、不動産業)の優位と短期取引、回転期間を刹那化するスペクタクル生産と消費の繰り返し、薬が新たな病を作り常用薬になるブロザック世代の創出等で挙げながら、著者は、極限的な時間の短縮傾向に資本主義システムの終焉を見る一方で、その処方の難しさも読者に示唆する。2018/12/21
一郎二郎
3
目標 ⒈使用価値の直接供給⒉個人が権力としての貨幣を蓄積不可に⒊私的所有権を公共権に⒋私人の社会的権力を禁止、嫌悪の対象に⒌資本と労働との対立を生産者達の連合に解消⒍自由な活動の為の時間の極大化⒎社会的必要への配慮が生産を決定⒏新技術や組織形態が社会的労働の負担を軽減し時間を解放⒐専門家による支配からの解放⒑生産手段は人民連合体に帰属11社会的諸関係等の多様化12物質的供給における平等13社会的労働は世帯内労働や共同作業と一体に14欠乏からの自由15経済のゼロ成長16我々を自然界の一員に17疎外なき人間に2023/10/28
Hidekazu Asai
1
反資本主義のための理論。 ハーヴェイは資本主義の自動崩壊を否定している。 資本主義は矛盾をたらい回しにする、と述べている。 ハーヴェイは資本主義と資本の区別をしている。 資本そのものの矛盾を取り出すこと。 それが反資本主義の最初の地点である。 2018/07/07
chiro
1
資本の増殖が搾取にあることはマルクスが喝破していた事であるが、この増殖が経済だけでなく環境にも棹差す状態になる中で我々はどこを目指すべきなのか?についての処方箋を示してくれている。人口減少が世界で最も進む中、この国の目指す方向はどこなのだろうか?移民を忌避し、労働人口が減少するばかりの中、成長を好むという二律背反には明確な答えはないと思う。グローバリゼーションとは一線を画すローカリゼーションに英知を注ぐことが解決策につながる気がする。2018/02/25