内容説明
言葉・モダニズム・日本―「日本的・伝統的な作家」という川端康成の評価を、徹底した小説テクストおよび批評読解から問い直す。
目次
第1部 川端康成の初発期―「新感覚主義」の生成と射程(初発期川端康成の批評―「表現」理念の形成;「招魂祭一景」論―疲労した身体、夢見る言葉;「青い海黒い海」論―言葉の“速度”と“遅れ”;「春景色」論―「写実」とその解体)
第2部 昭和初年代の川端康成―方法の諸展開(川端康成における「新心理主義」―方法としての“心理”;「抒情歌」論―「夢」の破れ目;「散りぬるを」論―「合作」としての「小説」)
第3部 川端康成の戦後―「新感覚主義」のゆくえ(「反橋」連作論―川端康成の戦後;『山の音』論序説―「老い」のモダニズム;「無言」論―無言のまはりを廻る;戦後の川端テクストにおける“記憶・忘却”の方法―「弓浦市」を中心に)
著者等紹介
仁平政人[ニヘイマサト]
1978年、茨城県生まれ。2009年、東北大学大学院文学研究科博士課程後期三年修了。博士(文学)。現在、東北大学大学院文学研究科専門研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うぴー
3
日本・伝統美を体現する作家として定型化される傾向にあった川端康成について、著者は作品においてどのように対象が描写されているかという手法に着目し、表現方法としての言語に関する問題意識や、西欧に端を発するリアリズムへの反発といった、従来十分に取り上げられてこなかった川端作品の側面に光が当てられている。各作品に対する著者の批評は単なるテクストの分析にとどまらず、同時代における川端の評論等を通じて表現方法の背景にある思想が説得的に示されており、本書で取り上げられていない作品を読み込むにあたっても参考になる。2022/07/28
Dave
1
川端康成を方法論的・テクスト論的に読み解く良著。自ら考えることを止め、川端を「日本的」作家としてのみ受け取る人々を見事に論理でぶん殴る。堀田善衛よりも安部公房に倣いたいと述べた川端、そこに「モダニスト」川端の矜持を感じずにいられない。川端のような作家を的確に受容できていないことは、日本文壇の持つ問題を示しているのではないか。自らも正確なテクスト読解を試みなければならないと胸に刻んだ。2021/01/11
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