内容説明
最初期から晩年の代表作をはじめ、混迷極める不遇時代の作品まで。日本であまり見ることのできなかった貴重な作品を含め多数掲載。
目次
抽象画、シュルレアリストになるまでの試み―1919‐1925年
暗黒時代―1926‐1930年
言葉とイメージ―1927‐1930年
選択的親和性―1931‐1942年
陽光のシュルレアリスム―1943‐1947年
「牝牛」の時代―1948年
日常の中の詩―1947‐1967年
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
keroppi
75
マグリットの絵に初めて惹かれたのは、「週刊少年マガジン」の図解ページだったように思う。現実世界を惑わし、脳みそがクラクラするような作風が大好きで、この本も手に取った。400もの作品を時系列的に並べて解説している。印象派風の絵があったり、描き殴ったような絵もあったりで、ちょっと驚いた。大好きだった馴染みの作品は、晩年に描かれているものが多いことを知る。どんな画家も一朝一夕に自分の作風を築けるものではないのだなと思った。2023/09/13
藤月はな(灯れ松明の火)
62
分かれるべき時制、言葉が意味する規定、実物に対しての色の指定。それらの概念を軽々と飛翔したのがルネ・マグリットだった。シュルレアリズムの画家と名高いルネ・マグリットの作品を400点収録した画集。似たような絵もありますが細部や色などが違い、観ていると間違い探しをしているかのよう。フォービズムめいたタッチの「牡牛」時代はマグリットなりの当時の芸術界への皮肉だったのが何とも痛快である。また、夫婦の写真というプライベートに肉薄した資料も収録されており、大変、貴重です。2023/08/04
蘭奢待
42
ルネ・マグリット作品集。実に多作ということを知った。とても有名な、山高帽の男、指の生えた靴、宙に浮かぶ岩などなどあるが、その裏に多様な作品があった。今ではシュルリアリスムの大家として著名だが、存命当時、全く顧みられることがなかったらしい。ブルトンとも袂を分かち、独自で切り開く。400もの掲載作品のため、同じような構図も多く食傷にもなるが、当時の好事家も、もしかすると作家自信も同じ思いだったかもしれない。2023/08/18
夏
31
マグリットの400作品が時代別に紹介されている。最初はキュビズムに影響された作品が紹介され、徐々にわたしたちがよく知る、マグリットならではの特徴的な作品が並ぶ。1943〜47年に印象派風の作品を挟み、最後にはまたマグリット独特の作品へと変遷する。マグリットの絵画は描かれているものは単純でわかりやすいのに、その作品の題名とはミスマッチしていて、見る側に混乱をきたす。それがマグリットの魅力だから、マグリットは自分の作品に解説を付け加えたりしない。マグリットはキリコを好きだったらしく、その影響は大きいだろう。2024/02/26
りらこ
29
1988年に開催されたルネマグリット展に行った事が昨日のことのように思い出されます。でも今の私は、マグリットの作品の中では、無機質な記号論的モチーフが繰り返される魅力よりも、不思議な暗さを含む部分に惹かれます。自分の人生も変化したものだとこの本をめくりながら考えます。好きな作家で、作品群。自分の心の鏡のようです。描けない私は見つめることしかできないけれど。2023/07/18