内容説明
一九世紀末から二〇世紀初頭にいたる一時期、他国の目にはうらやましいほどの教育文化面での日中蜜月の時代があった。当時、清末中国は日本近代化の成功の鍵を教育に見いだし、日本をモデルに鋭意教育改革に努め、日本もこれに全面的に協力した。年間一万人をこえる留学生が来日し、一方、六〇〇人をこえる日本人教習が中国に招かれて各地で教鞭をとったのはこの時期のことである。本書は、まさにこの「黄金の十年」を考察の対象とし、そこでの日中両国間の教育文化交流の問題について、とくに(1)清末教育改革における「日本モデル」、(2)中国人の日本留学、および(3)お雇い日本人教習の活動、の三点を中心に検討して、当時における教育交流の具体的状況を跡づけるとともに、その隆盛がいかなる経緯のなかでかくも短期間のうちに消失していくのか、いわば清末=明治末期日中教育文化交流の「栄光と挫折」の構造的要因を解明することをめざしている。
目次
1 清末中国の教育改革と「日本モデル」―プロローグ(変法自強運動と教育改革―「日本モデル」の提唱;西太后新政下における教育改革―「日本型」教育制度の確立)
2 中国人の日本留学(日本留学のはじまり;日本留学の隆盛 ほか)
3 日本人教習と中国教育の近代化(日本人教習の登場;お雇い教習の活動―その諸相 ほか)
4 流れの転換:「日本モデル」から「アメリカモデル」へ―エピローグ(アメリカ・キリスト教宣教会の対中国教育活動;義和団事件賠償金による留学生教育事業;アメリカ留学の社会的優位性)
著者等紹介
阿部洋[アベヒロシ]
1931年福岡生まれ、九州大学大学院卒、教育学博士。国立教育研究所室長・部長、および福岡県立大学教授、同大学院研究科長を歴任。国立教育政策研究所名誉所員、福岡県立大学および南京師範大学名誉教授、近代東アジア教育史・比較教育学専攻。教育史学会および日本比較教育学会理事
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