出版社内容情報
"アメリカ在住の女流作家アニター・デサイの長編小説(一九八五年ペンギンブックスより出版)の全訳です。平凡な大学教師デーベンはひょんなことで尊敬する孤高の老詩人ヌールの詠唱するウルドゥー語の詩を録音する仕事を引き受けることになりますが、この詩人がとんでもない奇人で、いつのまにかデーベンはその不思議な世界から足を抜けなくなるのです・・・。あのサルマン・ラシュディがRemarkable,magnificentと激賞した傑作です。
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一九八六年に第一巻『ペシャーワル急行』を刊行したこの選集もようやく第六巻までこぎつけました。インド文学は物語性においても社会性においても非常に底が深く、読んでいて本当に面白いのですが、まだまだ日本で馴染みがないのが残念です。
内容説明
もうあの世界から逃れられない。老詩人と至福の瞬間を共有したときから平凡な大学教師の日常性が崩落しはじめた。
感想・レビュー
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scatterbrain
1
ウルドゥー詩を愛しながらもヒンディーで教鞭をとる大学教授デーベンが、伝説の詩人ヌールへのインタビューの機会を得、冴えない生活に夢と希望を見出すところから話は展開していく。妻との関係、かつての富豪の同僚、レコーダーに示される近代化…あらゆる現実から目を背け、凋落したヌールをなおも神格化することで、自身を檻の中に閉じ込め、孤立していく。 ヒンドゥーとイスラムの宗教対立やパキスタン分離を経た後、インドの中でウルドゥー(パキスタンの国語)話者の肩身が狭くなっていた時代背景は、登場人物の理解を深めるかも。2021/11/24