内容説明
四季の扉の向こうに広がる、伊勢物語の新たな相貌。平安時代、竹取物語から源氏物語・狭衣物語へと続く物語史において、四季は飛躍的に重要性を増していった。その中間部の伊勢物語では、四季はどのような意義を発揮しているのか。伊勢物語は、古今集に代表される四季観を踏まえつつも、それを特有な形で継承することによって、四季の物語を成り立たせている。和歌集・漢詩文集などの四季観を要所に導入して個々の四季物語が実現し、そしてそれをテコとして伊勢物語の世界全体が、かけがえなく支えられていく。本書ではその様相が、春夏秋冬の各領域において明確に提示されている。
目次
第1章 春の物語(一)―物語冒頭部をめぐって
第2章 春の物語(二)―物語冒頭部以後
第3章 夏の物語
第4章 秋の物語―衰退凋落をめぐって
第5章 冬の物語―雪をめぐって
第6章 古代の夏の季節感―和歌集夏部のホトトギス詠を手掛かりに
第7章 四十三段の夏の物語
第8章 六十段の二面的男像―朱買臣像の重層的引用
第9章 『詩経』衞風「〓」と『伊勢物語』九十六段・六段―男の物語の屈折点
終章 本書の考察の概要と文学史的展望―四季の時空の男主人公像
著者等紹介
後藤幸良[ゴトウユキヨシ]
岐阜県生まれ。東北大学大学院博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。新潟県立高校教諭、新潟大学人文学部助手、長岡工業高等専門学校助教授を経て、相模女子大学学芸学部教授。専門は平安朝文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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