内容説明
これから寝かしつけようという幼い子どもに、手足を切断するような話など、とてもできない―。そんな批判を受けて改筆される以前の初版『グリム童話』では、残酷な刑罰、男女の性愛なども、あけっぴろげに語られていた。夢のように見えるおとぎ話の中に隠された残酷、狂気、不道徳の世界、そして、当時の人々のアクの強い知恵を、感じてほしい。
目次
1 ヘンゼルとグレーテル
2 トゥルーデおばさん
3 長靴をはいた猫
4 わがままな子ども
5 灰かぶり(シンデレラ)
6 千匹皮
7 赤ずきん
8 ガチョウ番の娘
9 兄と妹
著者等紹介
由良弥生[ユラヤヨイ]
幼少の頃より、日本や世界の読み物文学に興味をいだき、学生時代は文学を専攻。世界各国に伝わる古典や伝承の研究を続けている。地域をこえて共通する比喩のイメージに関心をもち、世界各地の童話や昔話の再現に挑戦、ベストセラーを次々と生み出す。当時の世相、風俗、恋愛、さらには隠された人々の深層心理を探り、大胆に再現描写するその巧みな筆致は多くの人に支持され、高い評価を得ている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
158
数あるグリム童話の中で9編の物語を選び著者なりの解説を加えているのだが、今ひとつテーマが掘り下げが浅い気がする。本書の題名『大人もぞっと―― 』というのがテーマに当たるのであろうが、〝残酷”〝性愛”〝狂気”等といった非日常性が何処から来るのか?というところまで追及してほしかった。あくまで私見だが、自分としては『森』という場所がキーワードではないかと分析する。すべての作品ではないけれどもグリム童話(というより西欧ヨーロッパにおける童話・民話の類い)には森が登場する。それが物語の共通のメタファーとなっている。2016/06/08
🐾Yoko Omoto🐾
105
外国の童話・日本の民話や昔話など子供への読み聞かせなどで伝えられている作品ほど、元々の内容はまるで違うとは聞いたことがあった。この作品は18世紀後半に世に出された初版のグリム童話になるそうだが、「ヘンゼルとグレーテル」「長靴をはいた猫」「シンデレラ」「赤ずきん」など馴染みの物語が本当はそんな話だったなんて…という驚きは大きい。中世から近世初期の人々の道徳観念や信仰、生活習慣など今では考えられない内容がある一方で、戒めや因果応報・陰徳陽報など根底にあるものは教えとして不変であるのだなという印象を受けた。2014/08/16
ままこ
98
初版本を元にした「メルヘン」の裏にある残酷、狂気の世界が描かれている。「長靴を履いた猫」はほとんど知ってる通りの話だったが深読みするとそんな意味にも捉えられるとは…。「わがままな子ども」シュールでこわっ!「灰かぶり(シンデレラ)」これが一番印象に残った。骨組みは一緒だけど細かい設定が違う。意外性がありゾワッとするよく出来たホラー。「千匹皮」抗えない輪廻。ジワジワくる怖ろしさ。解説は時代背景や因習などが分かりやすく書かれてあり物語に含まれる意味が知れて良かった。大人向けグリム童話。2019/08/23
maya(*ᴗˬᴗ)
68
子供の頃に読んだ童話の印象がすべてぶち壊れました(笑)子供の頃に読んだ童話は、キラキラしていて凄い夢のようなお話。でも、今回読んだ9個の童話は、、、とても子供には読み聞かせられない童話ですね(笑)グロいシーンがある話もあって、驚き(°д°)!!1話1話のあとに、解説?も書かれていて深く知る事ができました。昔話は日本。童話は外国。なのか!!てことも今更気がつきました(笑)なかなかスラスラ読めて、面白かったです!2013/09/11
キムチ
64
厳しい現実~社会、自然のもろもろにさらされ、生まれても生きることが今の何割かという中世。しかも宗教という縛りの中で「生きる」ことへの訓示を込めたグリム童話。童は邪悪<無邪気>という存在が伝わって来て面白い。むしろ、現代、そう行ったことを社会的に忌避する風潮が強まってきており、今の訓話として読める。近親相姦、LGBTなども当たり前にあったかと(日本でも)そういう事を避けるべく刊を重ねて糖衣して行った経過も伺われ「みんなは幸せに暮らしました」という表現で納めて行くんだね。2020/09/28