出版社内容情報
カバのお医者ポポタムは「患者が死んでからこそ私の出番」と、自ら発明した糊やポンプを駆使して、桁外れの治療を……。(S-18)
<読んであげるなら>---
<自分で読むなら>小学中学年から
内容説明
カバのお医者ポポタムは、「患者が死んでからこそが私の出番」と、自ら発明した糊やポンプを駆使して大活躍…アフリカにパリにと桁外れの治療活動が展開する破天荒な表題作の他に、人里で暮らすことになった鬼の運命を描く現代の寓話「人食い鬼の話」など三篇を収録。小学校中級以上。
著者等紹介
ショヴォー,レオポルド[ショヴォー,レオポルド][Chauveau,L´eopold]
1870年、リヨンに生まれ、のちパリに出て医師となる。アルジェリアでの農場経営、軍医などの経歴をへて、第一次世界大戦後は創作活動に専念。多数の小説を発表する一方、塑像や絵画も制作。1940年没
出口裕弘[デグチユウコウ]
1928年東京生まれ。1951年東京大学仏文科卒。1992年一橋大学教授定年退職
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
79
何に驚いたかって。ポポタム先生が人間ではなかったってこと。カバかぁ。そっか、名前…ポポタムじゃん。だってさ、文章には書かれてなかったんだもん…。絵にはあったけど。人間のハンターをぱくりとやったところで⁇となってしばし唖然。でも後から見れば裏表紙に「カバのお医者ポポタムは、『患者が死んでからこそが私の出番』」とあった。ポポタム先生の治療の一例。ワニの死骸をのりづけしポンプで空気を入れ再生させるも破裂。再手術で首としっぽを逆につけ、ノコギリで切りとり再再再生。のりづけの継ぎ目に塗ったペンキの名前はポポタミン。2022/02/20
らぱん
40
シリーズ3作目では、表題作カバである名医ポポタムのお話が150頁と長く、いくつかのエピソードで構成されている。一般の教訓の逆の教訓が騙られ、アナーキーでアグレッシブな物語になっている。4話のうち、好みはシュールで無常観すら感じさせるアザラシの話になる。今回の拾いものは、あとがきの書き手の一人である秋野亥左牟氏とは縁があって、いろいろご馳走になったり、愉快な時間を過ごしたことを思い出した。既に故人となって何年も経ったが、あとがきを読んで、ショヴォーの騙りはいかにも彼が好きそうだと納得もし、懐かしくなった。2019/07/17
めしいらず
35
ルノー君による"ジョブン"から否が応でも高まる期待の中、今回もそれに違わぬ抜群の面白さ。表題作は、著者には珍しい社会批判の要素がある。突拍子もない医療行為ながら結果を残し、勇名を馳せるカバ医者。西洋医学の黎明を見るよう。現代に行われている医療だって、2世紀前の人たちの目から見たら、やっぱり突拍子もないはず。ポポタム・ブラックにニヤリ。しかし、この巻の白眉は「人食い鬼の話」。相当残虐な話だが、ショヴォー氏の真骨頂である予断を許さぬ奇天烈なストーリー展開と、ヘタウマな挿絵に中和され、実に味わい深い話に昇華。2013/12/08
ぱせり
10
奇想天外さのランクはかなり高い。そのせいかな、びっくりするレベルを通り越して、静かに受け入れてしまう。まるで先が読めないのも嬉しい。予想を必ず裏切ってくれるのもうれしい。どきどきするのに、妙にのどかで、ほんわかとおかしい。2013/04/28
きゅー
10
収録作品は4編。どの作品でも、物語の外側でショヴォー氏が息子のルノー君にお話をしているという設定。彼の作品の良さは、その奇抜な物語、ブラックユーモアだけではなく、その根底にはルノー君の愛らしさにある。彼がいればこそ、これだけどぎつい物語が心穏やかに読めるものだ。今回は未読の「人食い鬼の話」を読んだ。”人食い鬼”と言ってる時点で不穏なものを感じるが、やはり今回も血なまぐさい。ショヴォーによる挿絵がにいい味を出しており、ルノー君による序文も楽しい。今作はシリーズの中でも一番楽しめた。2013/01/16