内容説明
本書は、まず、近年いわれる「中山間地域問題」を、東北という空間にこだわりつつ、戦後の地域諸政策に通底する問題として明らかにした。さらに、「スキー場開発」と「共同体的土地所有」のあり方から「地元主導型」の開発とは何かを論じている。加えて、山村住民の日常の実践や生活習慣の背後にある「暮らしの論理」を拾おうと努めたモノグラフを配した。次に、大資本がその力を見せつけるように開発を進める磐梯山周辺の実態をつぶさに見て、その問題点と山村住民の対応をミクロなレベルで考察した。資本によるスキー場開発の大きな荒波に対して、ムラを挙げて対処した集落とそれが可能でなかった集落の差異を実証的に明らかにした。最後に、実証的な研究を続けつつ、現代の山村の暮らしに肉薄する「論理」や環境保全への実践に踏み出そうとする時に有効なものの見方について考えてみた試論が収められている。
目次
第1部 開発政策と変貌する農山村(東北地方の戦後開発史と中山間地域問題;スキー場開発の展開と土地所有―「共同体的土地所有」の意味 ほか)
第2部 会津地方のレジャー・スポーツ開発と地域の対応(会津地方の地域構造と開発―福島県のリゾート開発構想をめぐって;磐梯山周辺のレジャー開発と「環境問題」 ほか)
第3部 現代山村問題と環境保全へのパースペクティブ(「過剰」なる現代社会と身体・スポーツへのパースペクティブ;「持続可能なツーリズム」の論理とその可能性 ほか)