内容説明
再開発の名のもと、激しく変貌を続ける平成の都市空間に、異景となって沁みつく街角の残映を訪ね歩いた忘れじの紀行写文集。失われゆく街並みと建物の貴重な写真を多数掲載。
目次
人世横丁―東京都豊島区
マッカーサー道路―東京都港区
高浜橋―東京都港区
九段下ビル―東京都千代田区
羽田・船溜まり―東京都大田区
東上野コリアンタウン―東京都台東区
問屋橋商店街―東京都中央区
橋本会館―東京都千代田区
千代田街ビル―東京都千代田区
四十五番街―東京都中野区〔ほか〕
著者等紹介
藤木TDC[フジキティーディーシー]
昭和37年生まれ。ライター。『宝島』『荷風!』『映画秘宝』『漫画実話ナックルズ』などに連載
イシワタフミアキ[イシワタフミアキ]
昭和43年生まれ。写真家。雑誌を中心にドキュメンタリー、ポートレイト、料理からアダルトまでノンジャンルで活動。トタンに魅せられ、ライフワークとしてトタン美を撮り続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ホークス
48
終戦後の20年ほどに生まれ、今も当時の姿をとどめる街や建物のカラー写真と解説。闇市の強制移転先になった横丁や雑居ビル、裏通りに発生した料飲街や赤線跡。寂れて汚れた薄暗い路地にスナックなどの生白い看板が点在する。不規則にトタンやベニヤで増築された長屋は小さな異界を成す。魅力はシュールな退廃美だけではない。日本中で同じ様な光景が見られるのは、世間で忌避されたものや都合の悪いものが、共通の村八分指向によって追い詰められた場所だから。日本美に欠かせない凄惨な気配も当然濃くなる。人間の業が特殊な美観を生み出している2020/03/14
MOKIZAN
25
2009年刊行本。嬉しいことに県内も多く載っていた。リバーサイド屋台街、都橋商店街、小鳥の街(藤沢にありました、今やどれだけの人々の口から語ってもらえるのだろうか)等。その通りの熱さは、人々の熱気とも異なる、界隈となじみ辛い佇まいが醸す”暑苦しさ、むさ苦しさ”だったようにも今思える。各通りの背にそびえる高層マンションとの間には、相容れない臭気の壁が立ちはだかっていそうです。などと言ってても“廃れ”方は、都区内物件が凄まじいですね。2017/07/22
kinkin
23
コンクリートと樹脂で形成された現代の街。そんな街の一角には昭和に造られたバラック、小屋、モルタル造りの家がひっそりと残っている。かつては多くの人が生活し遊び飲食した名残りがこの本に紹介されている。昭和の佇まいが静けさと哀愁を漂わせている。お薦めの一冊2014/04/01
kokada_jnet
12
各地の、闇市のにおいを残す古びた食堂を食べ歩いた、「東京路地裏「懐食」紀行」(これも傑作!)の取材の際に発見された、「昭和遺跡」の数々。写真担当の人のブログもナイス。http://f-stop.blog.so-net.ne.jp/2010/01/07
ROOM 237
10
肴は炙ったイカでいい、トタンは錆びていなけりゃ風情がない。実家近所の立石を筆頭に、見覚えのある寂れたトタン造りのあの家この家あの飲み屋…。本書はカラー写真多数でうんちく控えめ、上から下から様々な角度から写した構図が憎らしい。やはり城東地区が多いのだが、小さい頃から見慣れているやっているのかいないのかわからない飲み屋は70%がトタン造り。トタン造りの内部に潜入したことがないせいで、こうして写真集を眺めたり外から様子を覗っても想いは募るばかり…それでは歌います聞いてください「トタン慕情」。2023/09/21