内容説明
連合国による占領の下、都市を舞台に若い男女の自由恋愛を描くモダンな娯楽映画“都会喜劇”が指し示したのは、敗戦の経験を乗り越えながら民主的思想を内面化してゆく日本人の新しいアイデンティティの姿であった。新時代のとば口に立った人々は何を欲望し、何を夢見ていたのか?細緻な文献調査に加え、木下惠介、島耕二、渋谷実、川島雄三、市川崑らの都会喜劇作品の分析によって民主主義イデオロギー下における大衆の想像力/創造力を闡明する、占領期文化研究の新機軸。
目次
第1章 占領期の言説における都会喜劇(都会喜劇とは何か;都会喜劇の原型;アメリカナイゼーションへの欲望と抵抗)
第2章 ジャンルとしての都会喜劇(ジャンルを構成する要素;都会喜劇の物語構造;都会喜劇の舞台;都会喜劇の題材と類型的キャラクター)
第3章 社会統合のユートピア(葛藤を解消する象徴的な物語;偽装に隠された真実を求めて―『東京のヒロイン』(一九五〇年)
民主主義国を牽引する青年の肖像―『天使も夢を見る』(一九五一年)
戦争の亡霊からの脱却―『情熱の人魚』(一九四八年))
第4章 欲望と不安の交錯(試練に立つアメリカナイゼーションの夢;ユートピアからの脱出―『自由学校』(一九五一年)
幻影を破る男性―『結婚行進曲』(一九五一年))
終章 歴史的カテゴリーとしての都会喜劇
著者等紹介
具〓婀[クミナ]
韓国の東国大学校演劇映像学部卒業。明治学院大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(芸術学)。現在、明治学院大学言語文化研究所研究員、国立映画アーカイブ研究補佐員。専攻、映画学、メディア文化論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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