内容説明
放射能汚染による被害は、その不可視性や晩発性、科学的知見が未確立であることなどによって、これまで過小評価されてきた。また、原爆と原発など事例ごとに経験が分断されやすく、共通の教訓を導き出すのが難しくなっている。本書は、広島・長崎での原爆投下をはじめJCO臨界事故や福島第一原発事故など、国内各地で起こった放射能汚染、原子力事故に関する詳細な分析を通して、被害の実態と、被害が過小評価されてきた構造的要因を明らかにする。過去から学び、同じ轍を踏まないための、まさに時宜を得た研究である。
目次
序章 くりかえされる放射能汚染問題―いかに経験をつないでいくか
第1章 「唯一の被爆国」で続く被害の分断―戦争・原爆から原発へ
第2章 スティグマ経験と「差別の正当化」への対応―長崎・浦上のキリスト教者の場合
第3章 人形峠ウラン汚染事件裁判の教訓と福島原発事故汚染問題
第4章 鳥取の新しい環境運動をたどる―青谷・気高原発立地阻止とウラン残土放置事件から3・11後へ
第5章 茨城県東海村におけるJCO臨界事故と東日本大震災
第6章 「低認知被災地」における問題構築の困難―茨城県を事例に
第7章 福島原発事故における被害者の分断―賠償と復興政策の問題点
終章 市民が抱く不安の合理性―原発「自主避難」に関する司法判断をめぐって
著者等紹介
藤川賢[フジカワケン]
明治学院大学社会学部教授、東京都立大学大学院社会科学研究科博士課程満期退学
除本理史[ヨケモトマサフミ]
大阪市立大学大学院経営学研究科教授、一橋大学博士(経済学)、日本環境会議(JEC)事務局次長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。