内容説明
「被告人は無罪―」一九八三(昭和五八)年七月一五日、熊本地裁八代支部で判決が言い渡された。死刑囚再審で初めて無罪判決が下された免田事件。戦後間もない一九四九年一月、熊本県人吉市で起きた強盗殺人事件の容疑者として免田栄さんが逮捕されてから、実に三十四年の月日が流れていた。自白やアリバイについてこの冤罪事件を徹底検証した「検証免田事件」に加え、逮捕現場での免田さんのインタビューを掲載。判決後、自由社会で生きる免田さんを追った記事を収録し、今なお問題を抱える冤罪の構造に迫る。
目次
第1部 免田栄さんインタビュー(本当の民主主義をどう根付かせるか)
第2部 「検証免田事件」(アリバイ;自白;錯乱 ほか)
第3部 判決以後の免田栄さん―新聞記事より(寄稿「免田栄被告獄中三十余年 心の遷い」;免田さん「獄中記」出版へ;無罪から一年、謳歌する自由 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
那由田 忠
7
再読。読んだことも忘れていたが、改めて49年の祈祷師殺害事件である、免田事件がどのように冤罪であることが明らかにされたかを確認した。最初の死刑確定事件の再審無罪で有名。こうした本を読むと、早くも56年に再審開始決定を西辻裁判官が行ったと書かれているが、一般には27年後の83年に再審無罪判決が出たことしか知られていない。司法界と法の「安定」を守るため、無罪を解きあかした西辻決定を破棄した59年の高裁決定の闇がある。冤罪事件であると共に、誤審を重ねた裁判官の傲慢さにメスを入れなければならない。2015/05/23
Ikuto Nagura
2
免田さんや弁護側だけでなく、被害者、警察と検察官、裁判官、法学者や法医学者、そしてマスメディアと、多角的な取材結果をまとめた良書。冤罪ものに有りがちな、悪虐な国家権力と闘って冤罪を晴らすヒーローという内容ではなく、免田事件を通じて、二度と人権蹂躙をしないためにどうすべきかを問いかける。「死刑囚の間で“一人の警察官がした事件処理は、最高裁判決に類する”と語り継がれているが、それだけ警察官の行為は絶対ということ。私の人生を一言で表現している言葉だ」未だに代用監獄も、密室の取調室も、死刑制度も残されてるけれど…2014/10/22
ケッヘル(次女)
2
震撼事件シリーズ。色んな事件に関する本を出してるシリーズでしたが、この出版社、もうなくなってますんで絶版です。免田事件は死刑無罪事件のひとつ。戦後すぐの自白偏重主義時代に、虚偽の自白を強要されて死刑にまでなってしまったという冤罪事件です。経緯が詳細に書いてあり、また無罪となった後の展開などにもページを割いていて面白いです。2010/06/27
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