内容説明
「井上達夫の法哲学の世界」に誘う、暴走する世界と迷走する日本への反時代的「檄」。実践と原理を結ぶ、40年間の知の行路。その「回顧的総括」と、いま熱きメッセージを込めた「未来への提言」
目次
第1章 日本は何処へ行くのか(時代に問う―虚偽が真理に勝つのか;“戦後”から“戦後以後”へ;「保守」対「リベラル」図式の混乱を正す)
第2章 立憲民主主義の成熟に向けて(九条論議の欺瞞を断つ;天皇制と民主主義;立法と司法を建て直す)
第3章 世界と向き合う(国際社会に正義はあるのか;欧米中心主義を超える視点)
第4章 知の在り方を問う(知と実践;正義論の批判的組換え;批評という営為)
第5章 人生と法哲学(人生を/人生から考える法哲学;「自分史」的省察;逝きし先達に捧ぐ)
著者等紹介
井上達夫[イノウエタツオ]
東京大学大学院法学政治学研究科教授法哲学専攻。1954年大阪に生まれる。1977年東京大学法学部卒業。1977~83年東京大学助手。1983~91年千葉大学助教授。1991~95年東京大学助教授、1995年より現職。主な著作『共生の作法―会話としての正義』(創文社、1986年、サントリー学芸賞受賞)『法という企て』(東京大学出版会、2003年、和辻哲郎文化賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やまやま
11
天皇制についての論評ー「最後の奴隷制」という表現を含め著者の主張を興味深く読んだが、最近の週刊誌記事などを振り返ると、皇籍離脱の自由は本来基本的人権から合理的に導かれることであろうに、やはり皇室は「人」としては扱われていないことが改めて確認できた。平成の天皇個人については「異質な他者との共生」という点での優れた思想を持って実践に励んだ人物との評価の一方で、男性皇位継承や女性の皇族離脱といった点の法規範、具体的には憲法や皇室典範の矛盾を語ることから転じて、九条問題への憤激に繋がっていく。2021/04/24
inu
3
本書でしか読めない文章もあるけど、基本的にはこれまでの著書を読んでる人はわざわざ読まんでもいいかな 2021/05/30
千本通り
2
著者の東大教授定年退官に合わせて出版された本で、著者の業績の集大成といえる。著者の学問的思想・哲学の部分は専門用語と精緻な論理性で読むのに苦労したが、著者の幼い時の体験を描いた「貧すればこそ鈍せず」は著者がこんな貧困生活を送っていたのかと驚かされた。「正義」にこだわる著者のバックボーンを知るには良書である。2023/12/03