内容説明
鉛筆。その起源は三千年を超えて古代エジプトにさかのぼる。滑らかな書き味。木の削り具合。折れない芯。三角や六角のデザイン。精妙に変化する濃度。鉛筆をめぐって、無数の技術者たちが工夫と発明を重ねてきた。人の夢は鉛筆を生み、鉛筆は人の歴史を記録する。レオナルド・ダ・ヴィンチ、リンカーン、ヘミングウェイ、ナボコフ、H・D・ソロー…。このありふれた道具をいとおしんだ偉人たちの、知られざるエピソードを豊富に紹介。小さなモノから見えてくる、壮大な文化史。
目次
1 忘れられた道具
2 「鉛の筆」の謎
3 鉛筆前史
4 木製鉛筆の登場
5 イギリスの石墨発見
6 現在の鉛筆はフランスでつくられた
7 ドイツの鉛筆職人
8 アメリカの鉛筆開拓者
9 森の職人H・D・ソロー
10 ロンドン万博で行われた実験
11 ドイツのブランド合戦
12 アメリカ初の鉛筆工場
13 世界鉛筆戦争
14 芯を支える木
15 技術者が心のなかで描くもの
16 折れない芯
17 鉛筆削りとシャープペンシル
18 レーニンが認めた米国のビジネスマン
19 競争、恐慌、そして戦争
20 鉛筆先進国と後進国
21 完ぺきな鉛筆
22 どこにでもあるモノの物語
付録(コ・イ・ノア鉛筆会社の「鉛筆製造法」より;鉛筆のコレクション)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
53
私は鉛筆が好きで、芯ホルダーなども興味があります。日本では三菱鉛筆とトンボ鉛筆が有名ですがあとがきに少し日本の事情も書かれています。その鉛筆の歴史などを各国の事情なども含めて書いてありかなり参考になりました。ドイツのファーバー・カステルやシュテッドラーなども好きなので楽しめました。2015/06/05
Koichiro Minematsu
49
最近は身の回りに鉛筆を見かけなくなった人もいるだろうが、本書を読み、鉛筆のように単純でありふれたものの発展がいかに複雑だったか知ると、鉛筆もまた愛おしく思える。きっともう一度握って描きたくなります。奥深い本でした。2022/06/28
てつこ
2
鉛筆史。鉛筆の誕生から現在までの技術革新や鉛筆産業を発展させてきたキーパーソンなど。鉛筆って身近すぎて意識したことないけど、その誕生時は大きなイノベーションだった。石墨が豊富だった英国が生産の中心だったが、フランスが品質を高める製造法を確立し、ドイツの鉛筆メーカーが世界中に製品を輸出、最後はアメリカの企業が生産拡大を実現し覇権を握る。英国、フランス、ドイツの時代は製造法が企業秘密だった。因みに「森の生活」のソローはアメリカの鉛筆メーカーとして大成功していた。2019/09/22
やっさん
1
A5判2段組みで400ページ強の著書は鉛筆の黎明期から現在(刊行時)に至るまでの鉛筆の歴史が網羅されている。原型はB.C.1400年代のエジプトまで遡れる鉛筆という代物は、あまりにも身近すぎて注意して記録されることの少なかった、かわいそうな道具。ドイツを中心とするヨーロッパの鉛筆製造が徒弟制度/家内工業的/閉鎖的(ギルド)であったのに対し、アメリカでは機械の開発による小人力化/大量生産が進んでいったというのはとても興味深かった。あとがきには、日本の鉛筆業界についても記述があって良かった。2011/12/23
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